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+信念と真紅の剛剣グラフィード ――夢を見た ゴツゴツとした屈強な男と、その背に憧れる1人の少年。 少年があおぎ見る男は少年の父親。 そして少年は……子どもの頃の俺だった。 『“正義”を全うしろ』 子どもの頃から親父に言われてきた教訓。 半ば口癖のように親父が言っていたこの言葉は、俺の生き方であり、俺という個人の根幹だった。 悪を許さず、弱者を助ける為に戦う親父の姿は、今でも俺にとっての理想だ。 そんな親父の様な立派な戦士になりたくて、親父を越える戦士になりたくて、俺はその背中を追うように街の傭兵となった。 ――夢を見た 大人でも難しいと言われている任務を終え、街の人々から称えられながら、その声に満更でもない表情の少年がいる…… 傭兵となったばかりの俺だった。 大人達は俺の事を街の自慢だと言い、皆笑顔で接してくる。 特に、向かいの家に住む幼馴染の少女は、俺の戦果を自分の事のように喜んでいた。 だが、親父に認めて貰える事はなかった。 「もっと強くならねぇと、俺には勝てねぇぞ」 親父は俺にそんな言葉を掛けるようになった。 一切褒めず、笑わない親父の顔を横目で見ては、苛立っていた。 今思えば、親父の笑った顔は記憶にない。 ――夢を見た 鎧を着込み、大剣を担ぎ、晴々とした表情で帰路に着く青年…。 傭兵の任務を終えた俺だった。 自分を鍛え続け、故郷の周りの仕事だけでは物足りなくなっていた俺は、シャムールから遠く離れた街の仕事も請けた。 ある日、目に入った仕事……人を襲うという凶暴なドラゴンの討伐依頼。 騎士団30人を返り討ちにしたという内容に、仲間たちは足をすくませていた。 俺は、今も苦しめられている人々の為、正義を全うする為に、依頼書を手に取った。 炎を吐き、鋼のような鱗を纏うその龍は、今まで戦った敵とは比べ物にならなかった。 それでも俺は、単身でドラゴンと対峙した。 親父に……俺を認めさせる為に。 悪戦苦闘の末、ドラゴンの胸元で確かな手応えを感じる。 動かなくなったドラゴンを前に、拳を握りしめて空を仰いだ。 討伐の報告を終えると、嬉し泣きする村の人々が見え、やっと親父に追いついた…強い戦士になれたと感じた。 故郷へ真っ直ぐ帰る事も出来たが、この大義を果たした事を親父に誇示する為には、土産話だけでは足りないと考え、評判の高い鍛冶屋がひしめく街「イオ」に寄る事にした。 倒したドラゴンの角から剣と鎧の作成を依頼する。 これを見せれば、さすがにあの親父も俺を認めるだろう……。 ――夢を見た 涙で顔を歪め、怒りの炎を瞳に宿した男…… “復讐”に囚われた俺がいた。 ドラゴンの依頼を終わらせた事を報告しようと家に帰ると、親父の姿はそこになかった。 机に放り投げられた雑な書き置きには、「仕事でアルモニアへ行く」とだけ書いてある。 親父はまだまだ現役の傭兵、引退なんてする気もさらさらないのだろう。 しかし、何日経過しようと帰って来ない親父に、俺は一抹の不安を感じた…。 煮え切らず、俺もアルモニアへと向かう……。 そこで待っていたのは…… 親父の訃報だった―― 非人道的な商売をしている奴隷商人が街を脅かしている事―― 仕事を終えた帰り、逃げ出した奴隷の女を親父が見つけて話しかけた事―― 女を追ってきた連中から、女を庇って親父が死んだ事―― 親父の依頼主、目撃した街の人間、元奴隷の女。 様々な人々から散り散りの情報を集めた終わった俺は、小さな丘の上に刺さった親父の剣の前で……絶望に打ちひしがれていた。 薄暗く淀んだ雲で覆われた空の下、俺は“正義”が何なのか分からない。 悔しかった、悲しかった、憎かった―― 初めて抱いた黒い衝動に身を任せ、その日の内に奴隷商人の家へ乗り込んだ。 居間にいた夫婦は、一見人の良さそうな人物に見えるだろうが、俺の目にはまるで醜い悪魔のように映った。 剣を突きつけると、夫婦揃ってガタガタと震えながら目に涙を溜めながら命乞いをする。 「どうか……どうか命だけは……!」 こいつらの言っていることが、俺にはまるで理解できない。 できる訳がない。 散々人を物のように扱い、その命を弄んだであろう人間が…… “悪”が使っていい言葉ではなかった。 そして、俺の中で何かが切れた―― 俺は夫婦を斬り殺し、屋内に火を点け、家を後にする。 今なお思い返しても、他人事のようにしか表現できない…。 正義の味方として、気高く、高潔だった……あの親父が……あの“正義”が……こんな“悪”に屈したという事が…信じられなかった……。 信じられる訳がなかった。 ――夢を見た 心もなく、ただただ魔物を狩る男の姿。 仕事に没頭する俺だった。 からっぽのまま故郷に帰ってから、それまで以上に過酷な任務に就いた。 休まず働く俺を見て、周りからは心配する声があがり、時には恐れられる事もあったが、俺は気にしなかった。 “正義”が分からない。 人の役に立つ事…? 誰かを助ける事…? 誰かを殺す事…? 殺される事…? 「なぁ、あんたの正義ってなんだったんだ…?……親父」 ――夢を見た 苦悩の表情でフラフラと歩く男の姿。 アルモニアの街を後にした俺だった。 ある日、魔物退治の依頼を受けて、俺は再びアルモニアへと足を運んだ。 仕事自体は簡単に終わった。 俺は街を出る前にある事を確かめる為、街中を散策する。 音楽が鳴り響き、活気が溢れ、人々の笑顔が溢れる。 奴隷がいない。 争いの声はない。 この街は平和だ。 あの時の行いが正しかったのだと、自分に思い込ませるには充分だった。 しかし、それも長くは続かない。 郊外に行く途中、ふいに殺気を感じた。 振り向かず、歩幅を変えず、殺気を出している“誰か”に違和感を与えない様に人気のない路地裏へと足を運ぶ。 周囲に人がいない事を確認し、誰もいない筈の空間に向けて声を出す。 「さっきから追ってきてるのは分かってる。俺は逃げねぇから、出て来いよ」 背後から足音が響いた。 出てきたのは年端もいかない少年。 槍を構え、恐ろしい程の殺気を放っている。 見覚えのない顔に名前を聞くと、少年は静かに言葉を吐く。 「……覚えているか?お前が殺し……家を焼いた……。この街の夫婦を、覚えているか…?」 「!!?」 様々な憶測が頭の中で飛び散る。 敵の槍が迫って来たことに気づかない程の動揺は、この時が最初で最後だ。 カランッ―― 空中に舞った槍が地面に落ちる音で我に返る。 俺の剣は少年の首元で止まっていた。 自分がどう動いたのか分からないが、両者の決着はついていた。 丸腰になった少年の目から、殺気が消える事はない。 こいつは…あの夫婦の……。 「……早く殺せよ。」 少年はただジッと俺を見据えて死を望む。 俺は敵を見逃した記憶はない。 だが…こいつは悪党でも魔物でもなく、親の仇を討つ為にここにいる…。 あの時の俺と同じだ―― 「早く殺せよ!」 必死に食らいつく少年と、あの時の俺が重なる。 俺は……俺は…… 「もっと強くならねぇと、俺には勝てねぇぞ…。」 思わず、親父の言葉が出た。 ガキの頃、言われると悔しくて仕方のなかった言葉だ。 親父は、どんな気持ちで俺にこの言葉を掛けていたのだろう…。 剣を下ろし、少年に背を向ける。 今は、一刻も早くこの場を去りたかった。 長い間、俺の中にあった見えない何かが、突然ハッキリと目の前に現れたという現実から逃げたかった。 俺はそのままアルモニアを後にした…。 ――夢を見た 仰向けで天井を眺めたまま、時が止まったような空間で物思いに更ける男。 これも……俺だった……。 故郷に帰ってからは自問自答の日々が続く。 傭兵仲間から集めた情報―― あの少年は「エリオット」という名前で、やはり俺が殺した奴隷商人の夫妻の息子だった。 噂では、奴隷商人は街の人間からも忌み嫌われていたらしい。 だから罪のない小さな子どもでさえも、誰も引き取ろうとはしなかったそうだ。 そんな彼を音楽隊騎士団の団長が彼を拾い、騎士団に入隊させたらしい。 最近では腕を認められて2番隊隊長に着任したとか。 あんな年端もいかない子どもが隊長……並の努力や修練だけでは決してなれない。 きっと血のにじむような努力をしたのだろう。 彼をそうさせる“モノ”は何か―― 簡単だ、両親を殺した俺への“復讐”だ。 俺があの少年に植えつけてしまったものだ。 あの少年は、俺の“罪”そのものなのだ。 復讐を果たしたことによる更なる復讐。 延々と続く負の連鎖。 俺はあの日―― 汚い商売をし、俺の親父を殺し、危険が迫ると平気で命乞いをするゴミのような人間を殺しただけだ―― ――――――――だが あいつにとっては、唯一の親だったんだ。 あいつは、あの時の俺と同じ気持ちなのだろう。 俺の復讐が一人の人間を狂わせた。 これが、はたして親父が言っていた…… 俺が望んだ…親父の言う“正義”だろうか…? ――――――――違う 正解は分からないが、間違っている事はハッキリと分かる。 だとすれば……俺は何をしたらいい……? その後、しばらくして帝国が侵略を開始した。 各地で争いが起こり、戦乱の世が広がる。 無論、故郷のシャムールも例外ではなく、帝国兵が攻め込んで来た。 街の人々が傷つき、倒れていく中、俺はただ何もしなかった。 誰かを殺せば、また誰かが恨み、そして殺しにくる。 この世の中の…“正義”とはなんなのか…。 そんな事を考えていた時、窓の外に炎が上がっていた。 とっさに外に飛び出ると、幼馴染の家が燃えていた。 炎の中に飛び込んだが…… 「大丈夫か!!?おいっ!!!――」 ――夢から覚めた 救いたいモノがある、守りたいモノがある。 敵の事情、考え、信念…それらに想いを馳せ、迷い、自分の“正義”に問いかけた上で行動したとして……それによって大切なものが守れないというのなら……。 俺は、敵にとっての“悪”になろう。 あの剣を持ち、鎧を着て、帝国と戦う事を決めた。 大陸中で暴れ回る俺は、帝国から見れば紛れもなく“悪”として映っているだろう。 それで良い。 もう俺は迷わない。 気持ちが楽になった。 親父の言う“正義”がなんだったかはもう確かめる術もない。 俺は、俺の“正義”を通す。 俺はラキラという街へ向かった。 音楽隊騎士団の2番隊が治安を守っているらしい。 そこで見たのは胸に焼き付いた顔だった。 あいつが成長している事は遠目からでも分かった。 まだ身体は小さく子どもに見えるが、その隙の無さ。 戦士としての気迫が目に見えた。 どうやら俺は、とんでもないモノを生み出してしまったらしい。 「グラフィードさんですね?少しお時間を頂けませんか?」 俺に気付き、話しかけてきた少年は落ち着いている。 あの時の俺とは違う。 ただの衝動ではなく、今のこいつは強い信念を持っている。 人気のない所まで移動して俺は剣を抜いた。 少年は静かに俺を見つめる。 「仇が打ちてぇのは分かるが、俺に勝てるようになったのか?」 「あの時の僕とは違います。あなたを倒す為に、僕は強くなりました」 少年は驚くほど落ち着き、一切視線を動かさない。 背後であんな爆発音がしても……だ。 中心街から煙が上がり、黒い光が空を包む。 ラキラに帝国兵が攻め入り、魔物を出して暴れ回る。 シャムールに帝国兵が攻め込んだあの日が蘇る中、俺は剣を下ろし、少年に声を掛ける。 「悪ぃな。急用が入っちまった。俺は帝国のヤツらに好きにさせたくねぇ。お前はここで待っててもいいし、俺を後ろから襲ってもいい。お前の好きにしろ」 鋭く睨み続ける少年に背を向ける。 あの頃の俺だったらどうした? 想像も出来ねぇ。 こいつはどうするだろうか? 答えはこいつの“正義”が知っている。 俺みたいに、その場の感情だけで動かなきゃそれでいい。 向かってくるなら、全力で“敵”になってやるよ。 俺は振り返らずに、背後の“正義”に向かって言葉を吐く。 「ただし、後悔ねぇようにな」 +絶凍の王ヴァーンフリート ――氷塞都市コルキド 大陸の北に位置するこの土地は、標高の高い山岳地帯になっている。 辺りを白に染める雪は決してとける事はない。 初めて訪れる者は到底人の住める土地ではないと考えるだろう。 山をいくつも越すと、一際大きな尾根が姿を現す。 その雄大さから霊峰とも言われる巨大な山は、頂上に古の塔があると噂があったが、辿り着ける者は誰一人としていなかった。 その山の麓(ふもと)に、巨大な氷の壁がそびえる。 他を寄せ付ける事を許さないとばかりに冷気を出すその氷壁の中央には、巨大な門が構えられている。 巨大な門を開けると目に飛び込んでくるのは、その周りの風景からは想像も出来ない文明のある街並。 生命を拒絶するような山々の中心に、突如として現れる活気のある都。 初めて訪れた者は、例外なく目を疑い、その光景に感動するだろう。 門を潜り抜け街の中央アーチを潜ると、目の前に立派な王宮が姿を現す。 装飾の行き届いた豪華な王宮に建てられた旗は、この都市がただの街ではなく独立した国家なのだと主張していた。 険しい道程から他の国の者が踏み入れる事は殆どなく、自国内で生活の基盤を完全に構築している為、良くも悪くも鎖国的な国。 代々この国を治めてきた王族であるグラース家に、転機が訪れていた。 「エルグラウル様……!!意識をしっかりしてください……エルグラウル様!!」 38代目の王は、天蓋付きのベッドに横になり、最後の時を迎えようとしていた。 周りには、必死に治療を行っている術士、祈りを続ける大臣、そして王の子である3人の若者、更には王妃……。 エルグラウルを囲むそうそうたる面々は皆一様に、険しい表情を見せていた。 「親父…死ぬなよ!まだ早いだろ!!」 三男のカインフリートは父の手を握り、声を荒げる。 「よせ、カイン。もう無理だろう。術士もよくやった。楽にさせてやろう」 カインフリートの肩を掴む次男であるメイルフリートは、エルグラウルの死を受け入れているようだった。 だが、カインフリートは諦められる訳がない。 「メイル兄さんは親父が死んでも良いって言うのかよ!?ヴァーン兄さんもなんとか言ってくれよ!!」 カインフリートは目に涙を溜めながら吐き捨てる。 長男のヴァーンフリートは、その様子を後ろからただ黙って見ているだけだった。 「くそっ!!みんな親父の事なんてどうでも良いっていうのかよ!ちくしょう!!」 「カインフリート様……残念ですが……」 術士がカインフリートに声を掛ける。 それは、エルグラウルの心臓が止まり、もうどうする事もできないという意味だった。 「そんな……親父!!!親父ぃいいいいいい!!!」 カインフリートの悲痛な叫びが王宮内に響き渡った。 コルキドの街の全ての窓に、黒い布が掛けられた。 活気ある商店街も、騎士団の宿舎も、民は皆仕事に手を付けず喪に服す。 王族が亡くなったコルキドの伝統的な風景。 盛大な葬儀が行われ、集まった国民は一人ずつ王の棺がある祭壇に花を添えていく。 この極寒の地に咲く花の種類は少なく、唯一この季節に咲く雪のように白い花を一輪ずつ持っていた。 真っ白に染まった祭壇は、この国の王の権威を知らしめる。 「カイン、少しいいか?」 祭壇の横で涙を拭うカインフリートに、メイルフリートがそっと声を掛ける。 「メイル兄さん……やめてくれ……今は話したくないんだ……」 「そう言わずに聞け。大切な話だ。お前は、ヴァーン兄さんが王になる事をどう思うんだ?」 「ヴァーン兄さんが……?」 カインフリートは、言葉の意味を理解する事が難しかった。 メイルフリートは続ける。 「そうだ。ヴァーン兄さんが王となれば、この国が今後どうなっていくか分からない。あんなに何を考えているか分からない男が王になってお前は安心できるのか?」 「それは……」 「このまま行けば、王位の第一候補である長男のヴァーン兄さんが王となる。しかし、俺は許せない。あんな男に国を任せられない。ヴァーンよりは俺かお前の方が相応しいと思わないか?」 「…………。」 メイルフリートは淡々と話し続ける。 王となる人間によってコルキドの未来が変わっていく。 そんな事はカインフリートも解っていた。 だからと言って、自分が王になるなんて考える事すら出来ない。 「いいか、良く聞け。俺達が阻止するんだ」 ――数日後 ヴァーンフリートは王宮の書室で国の歴史を調べていた。 これまで、この国でどんな事があり、どのような政策が行われていたのか。 古い記録は無くなっている部分も多く全貌は分からなかった。 それでも一つでも多くを知ろうとしていた。 父、エルグラウルの行った政策はコルキドの騎士団の強化。 軍を強くする事で他国に威勢を誇示する。 それが国を豊かにするのか…ヴァーンフリートは疑問に思っていた。 確かに軍事力がある国であるならば、戦乱に巻き込まれたとしても自国が不利になる事はないだろう。 しかし、それにより民が豊かになるのかという疑問を幼い頃から持ち続けていた。 ―――― そもそも騎士団とはどのような者の集まりなのかを知ろうと、騎士団への入隊を志願した事があった。 大臣達は王族が騎士団に入るなど許されないと口を尖らせたが、ヴァーンフリートは自身の力を付けたいとエルグラウルに申し出て許しを得た。 騎士団で剣の稽古をしたヴァーンフリートは、鍛錬を重ねながら“力とは何か”を考えていた。 ある日、コルキドから少し離れた領地内の村に魔物が目撃されているという情報が入り、騎士団に討伐命令が出た。 しかしヴァーンフリートの出陣は許されない。 あくまでも自分は王族であり、仲間だと思っていた騎士団の面々も本当の仲間ではなかった。 王族は民と同じ目線に立つことすら許されない。 それがこの国の実情だった。 それでも、剣を持ち、稽古を続けたのは、“力とは何か”を知りたいからだ。 数日が立ち、玉座に大臣が慌てて入っていくのを見かける。 何事かと思い、玉座の扉の前で聞き耳を立てると、魔物の討伐に向かった部隊が帰って来ないという事だった。 しかし、外は吹雪に包まれており、とても援軍を送れるような状態ではなかった事から、明日の朝に天候が回復したら援軍を送るようにと父の声が聞こえてくる。 少しの間だったが、共に身体を鍛えていた仲間が危険に晒されているかもしれない。 ヴァーンフリートはその場を後にした。 数メートル前の視界もない猛烈な吹雪の中、必死に歩を進める。 雪の中につけられた足跡は、すぐ後ろで吹雪にかき消されていくような状態だったが、それでも騎士団の仲間を守る為ならばと歯を食いしばり進み続けた。 王宮の外はこんなに過酷な環境である事も知らなかった。 自分が腹だたしい。 普段民がどのような思いをしてコルキドで生活をしているのか、やはり王宮の中にいては分らない事が多いのだとこの時に悟った。 魔物が出現したという報告の村に辿りついた頃には、すっかり夜も更けていた。 昼間よりは吹雪は落ち着いた事で視界は良くなり、うっすらと軒並みが見える。 その時、目を疑った。 人の影が空中に浮いているのだ。 目を凝らして見ると、本当に人間が空中に浮いている。 その格好は騎士団の物だった。 それも一人ではない……何人もだ。 急いで近付き、下から見上げると、何か紐のような物で背中辺りを吊るされている。 よく見ると、家の屋根と屋根を繋いだロープが巻きつけられているようだった。 「今降ろしてやる!!」 声を上げるが、返事はなく、微動だにしない騎士は頭や肩に雪が積もっていく。 剣を構えて力を入れると吊るされているロープを切る事に成功した。 「大丈夫か!?おい!!」 首元を触るが、生者の温度ではない。 一人ずつ確かめてみるが、皆同じように死んでいる。 全滅―― コルキドの騎士団が、少数だったとは言え、どんな敵にやられたのだろうか。 確か報告があったのは魔物だった筈。 魔物がこんな見せしめの処刑のような事をする訳がない。 相手は……人間か……または…… ふと、村の人達の姿が見えない事に気が付いて辺りを捜索する。 民家の戸を片っ端から開けていくが、人の姿はない。 最後に村長の家だろうか、大きな納屋のある家を当たるが、ここにも人の気配はない。 「どこかに連れ去られたか……」 その時、納屋の方から物音がしたのを聞き逃さなかった。 納屋へ向かい、戸を開けると村人達が身体を寄せ合って怯えている。 「大丈夫か!?」 村人達は、助けが来た事に安堵しているようだったが、すぐにその顔色が変わる。 「後ろに!!あいつらが!!」 ヴァーンフリートが振り向くと、そこには魔術師のような格好をした集団が納屋の入り口を固めていた。 「誰だ貴様は……あの騎士共を降ろしたのは貴様か……?」 怒り。 そんな簡単な言葉では言い表せない感情に支配されるヴァーンフリート。 「なるほど。仲間を殺したのはお前達か……」 「余計な真似をしおって…。貴様は一人か?見たところコルキドの騎士団ではないようだが?……まぁいい。どの道死ぬ運命……」 魔術師はそこまでしか言葉を出すことができなかった。 ヴァーンフリートの剣が魔術師の喉元を捉えて、辺りに鮮血が飛び散る。 「貴様!!」 周りの魔術師が一斉に構える。 ヴァーンフリートは魔術師から剣を抜くと血を振り払う。 「言葉を交す価値もなさそうだな」 村人達はその光景に目を疑った。 コルキドの騎士団が束になっても勝てなかった謎の集団を、たった一人で次々と薙ぎ払っていくのだから。 「貴様は……何者だ……!!」 最後の一人になった魔術師は後ろに倒れこむと、目の前に歩いてくるヴァーンフリートに対して両手を上げて敵意がない事を示す。 「こちらの台詞だ。お前達は何者だ?答えろ」 剣を喉元につきつけるヴァーンフリート。 「それを言えば助けてくれるのか?」 ヴァーンフリートは冷たい殺気を放ちながら魔術師を見下ろす。 「愚問だな」 「ならば……せめてもの贈り物をしてやろう!!!」 魔術士は突然手の平からとてつもない瘴気を放つ。 「ぐっ……!!」 必死に顔を抑えるヴァーンフリート。 何か魔法を打たれたかと思い必死に構えるが、何も起こらない。 ゆっくりと手を下ろし、魔術師を再度見下ろす。 「何をした?答えろ」 「…………」 魔術師は手を前に出したままピクリとも動かない。 「答えろ!!」 力の限り蹴りつけると、魔術師はそのまま後ろに倒れこんだ。 不可解に思ったヴァーンフリートは魔術師の胸ぐらを掴み持ち上げると、目から血を流して死んでいる。 そして、そのまま足から砂のように溶け出した魔術師は、服のみが残り完全に消えてしまった。 「不快だ……」 魔術師の服を捨て、剣を降ろしたヴァーンフリート。 身体になにか異常がないか探るが、特に何もおかしな所はないようだ。 ふと後ろを振り向くと、村人達が怯えた様子でヴァーンフリートを見ていた。 「怪我をしている者はいるか?」 村人は顔を見合わせると、表情から除々に不安が消えていく。 村長だろうか、老人が一人声を上げる。 「ありがとうございます!私達はここに集められて…魔物に襲われていると救難信号を出せと言われまして……何人かは既に殺されてしまいましたが……ここにいる者は全員無事です」 「そうか。遅れてすまなかったな。王の代わりに謝罪しよう」 そういうと、納屋を後にするヴァーンフリート。 「お待ち下さい!貴方様は……」 その場を去ろうとすると一人の女性が呼び止めた。 ヴァーンフリートは一瞬立ち止まると、少しだけ考えてから返事をする。 「コルキドの騎士団に世話になった者だ。悪いが、表の騎士達に布をかけてやってくれるか?あのままでは、凍えてしまう」 王族などと知られたら何があるか分らない。 そのまま納屋を出ると、騎士の遺体を並べ、一つ頷いてから村を後にした。 コルキドに戻ると、王宮の入り口で大臣が慌てふためいている。 きっとヴァーンフリートの事を探しているのだろう。 頭を掻きながら、これから起こるであろう面倒事を想像して嫌気がさした。 「ヴァーンフリート様!!こんな時間まで……今までどちらに行かれておったのですか!?その鎧は……まさかあの村に行った訳ではありませんな!?ヴァーンフリート様!?私の話を聞いて下さい!どちらに行かれるのですか!?ヴァーンフリート様!!」 大臣を通りすぎたヴァーンフリートは、歩みを進めながら一言だけ返す。 「散歩をしていただけだ。何事もない」 ―――― 書室に少しだけ風が抜けた気がして、ふと我に返る。 あの時、確かに騎士団は強くなければいけないと考えた。 それでも、父エルグラウルが強化した騎士団は、あの魔術師達に殺されていた。 それは何故か……簡単だ。 兵を集める為に国の男達を徴兵したものの、その年齢は14,5歳。 つまり、あの時の自分よりも若い連中が無理矢理騎士団に入れられていた。 そんな事では騎士団の強さに直結はしない。 国を豊かにするのであれば、父のやり方は間違っている。 ヴァーンフリートは一つ決断をして自分の手を見つめた。 自分がこの国を変えなければいけない。 明日は王の任命式……自分に何が出来るのかを考えていた時だった。 「ヴァーン兄さん!!ちょっと来てくれ!!大変なんだ!!」 書室に飛び込んできたのは次男のメイルフリートだった。 「メイルフリート。騒がしいぞ。何事だ?」 「カインの奴が!カインの奴が!!」 ただ事では無さそうな表情から、何か嫌な予感がする。 「どうした?」 「いいから来てくれ!大変なんだ!!」 メイルフリートに急かされて付いて行くと、王宮の東側に向かっているようだ。 そこには、昔罪人や捕虜を捉えておく牢獄があった。 「メイルフリート。こんな所に何があるというのだ」 「いいから来てくれって!!」 一向に話を聞かないメイルフリートに苛立ちを覚えながらも、足を進める。 そして、一つの鉄のドアの前に辿り着いた。 「この中だ。入って中を見てくれ!」 言われるままドアを開けると、カインフリートが倒れている。 「カインフリート!!どうした!?その傷は……!?」 腹部からは血が流れているように見える。 ピクリとも動かないカインフリートを抱きかかえる。 まだ少し温かいが、息をしていない。 胸から腹部にかけて、切り傷だろうか…剣をうけたような跡が続き、大量の血が流れている。 「おい!しっかりしろ!!カインフリート!!何があった!?」 その時、入ってきた鉄のドアがガタンと閉まる音が牢獄に響き渡る。 カチャっと鍵が掛けられる音と共に、タッタッタと足音が遠のいていく。 「罠か……何を企んでいるのだメイルフリート……」 カインフリートを抱きかかえるが、もう心臓も動いていない。 弟を失い、絶望に打ちひしがれていると、複数の足音が聞こえてくる。 そしてメイルフリートの声が聞こえてきた。 「この中にヴァーンがいる!確かめてみてくれ!俺は見たんだよ!ヴァーンがカインを殺したんだ!」 少ししてから鍵が開く音がすると、鉄の擦れる音を響かせながらゆっくりとドアが開いた。 ドアの向こうには、大臣と兵士が何人か、更に後ろにはメイルフリートが見える。 「カインフリート様!!」 兵士は部屋の中に入ると剣を抜いてヴァーンフリートを取り囲んだ。 「ヴァーンフリート様!すぐにご投降下さい!」 「メイルフリート……お前は…………」 メイルフリートは声を荒げる。 「何をしている!!早くヴァーンを捕らえろ!」 「はっ!!」 兵士はヴァーンの身柄を押さえて手錠を掛けて連れて行く。 すれ違い様に術士が牢獄の中に入り、必死に魔法でカインフリートを治療し始めた。 「カインフリート様!!カインフリート様!!」 ドアを抜けると、メイルフリートが一瞬ニヤリと笑い、ヴァーンフリートの顔を見ていた。 兵士に連れて行かれる中、ヴァーンフリートはメイルフリートの画策を想像していた。 自室に連れてこられたヴァーンフリートは、椅子に座らされる。 兵士は後から入ってきた大臣に質問を投げた。 「本当にヴァーンフリート様の自室で宜しいのでしょうか………」 「構わん。今は牢に捕える事など出来ん。時期を考えろ」 ため息を吐きながら目の前に来た大臣は、険しい表情で話し始めた。 「ヴァーンフリート様……何があったかお話頂けますでしょうか」 「何を言っても証拠はない。好きに考えろ」 大臣は驚いていた。 きっと何か理由があるのだろうと踏んでいたようだ。 状況から考えるに、メイルフリートの画策をある程度想像しているのかもしれない。 ヴァーンフリートは、ジッと大臣を見据えたまま言葉を続けた。 「他に用がないのであれば、出て行って貰おう」 「て、手錠は外させて頂きます。明日はエルグラウル様の跡を継ぐ王の就任式。エルグラウル様が亡くなられた今、コルキドの民に余計な不安を煽る事は出来ませんので……よくお休みになられてください」 そう言うと、手錠を外すように兵に言い渡す。 兵士は戸惑っているようだが、渋々とヴァーンフリートの手錠を外した。 「では、明日またお呼びさせて頂きます。大変失礼ですが、本日の事もありますので、部屋の鍵を外から掛けさせて頂きますが宜しいですね?」 「好きにしろ」 ヴァーンフリートは一切表情を変えずに大臣が部屋を出るのをただじっと待った。 扉に鍵が掛かる音が聞こえると、自分の胸についたカインフリートの血を見て一つ息を吐いた。 「カインフリート……我が弟よ……すまない……」 翌日、玉座には国の重役が集まっていた。 ヴァーンフリートが玉座に入ると、既にメイルフリートが中央に立っている。 横に並ぶと、メイルフリートは驚いた様子だった。 「ヴァーン!!何故貴様がここに……!!」 王の椅子をジッと見たままヴァーンフリートは答えた。 「静かにしろ。亡きエルグラウル王の魂がまだそこにある」 メイルフリートは軽く舌打ちをした後、前に向き直る。 落ち着きがない様子を見ると、今日、ここに立つのは自分だけだと思っていたようだ。 大臣も揃い、一つ鐘が鳴らされると司祭が声を上げる。 「よくぞお集まり頂きました。これよりエルグラウル様の跡継ぎ、王の任命を行います。……と、その前に、皆様にお伝えしなければならない……残念な知らせがございます。エルグラウル様の三男、カインフリート様が……昨晩何者かに暗殺されました」 集まった皆が一様に驚きの表情を見せ、辺りはどよめきに包まれた。 ただ一人、ヴァーンフリートを除いて。 「皆様、ご静粛に。コルキドの王にご就任頂くのは、規定通りご長男のヴァーンフリート様となる事に変わりはございません。これより、就任式を………」 メイルフリートは声を荒げながら発言する。 「待ってくれ!皆聞いてくれ!俺は見たんだ!昨日、カインを殺したのはヴァーンだ!そこの大臣に聞いてくれ!彼も証人だ!」 また城内がどよめく。 しかし、ヴァーンフリートは一切動かずに玉座を見据えていた。 一人の長老が口を開く。 「大臣……それは本当かね?」 大臣は少し焦った様子で言葉を返す。 「えぇ……確かにカインフリート様が倒れている所に、ヴァーンフリート様が居合わせたのは見かけました。しかし、犯行の瞬間は見てはおりませぬ」 メイルフリートが割って入る。 「大臣!!あの状況でどうやってヴァーン以外の人間がカインを殺したというのだ!?何故ヴァーンはあんな所にいたのだ!?よく考えてみるのだ!殺したのはヴァーン以外にあり得ないだろう!!そして、ヴァーンは口を開かない!これが、何よりの証拠ではないのか!?」 場内の視線は一気にヴァーンフリートに注がれる。 ヴァーンフリートは相変わらず微動だにしない。 長老はヴァーンフリートに問いかける。 「今の話は本当なのですか?ヴァーンフリート様……」 ヴァーンフリートは少しだけ肩を動かした。 次の瞬間―――― 腰から剣を抜き、メイルフリートの首を跳ね飛ばした。 「うわぁあああああ!!!」 場内に悲鳴が響き渡るが、その声にも剣を向けてかき消した。 「静まれ!!!!」 沈黙が流れる。 長い長い沈黙の後、ヴァーンフリートは剣を降ろした。 「我が王となる。異論ある者は前に出ろ」 静まり返った場内に反対の声は出ない。 王には王族の者しかなる事ができない仕来りから、残ったヴァーンフリートが王となる他はなかった。 悲惨な状況に息を飲み、その場に居た誰もがヴァーンフリートに恐怖を覚えた。 そして、ヴァーンフリートはコルキドの王となった。 新たな王の就任祭の最中、民の間ではヴァーンフリートの噂で持ち切りになる。 王になる事を阻止しようとした弟を殺した、冷酷な王が誕生したと。 皆、その話を聞いては背筋を冷やし、コルキドの未来を心配していた。 ヴァーンフリートが王となってから数ヶ月。 今日も玉座に大臣が呼び出されていた。 「ヴァーンフリート王、お呼びでしょうか」 「うむ……。コルキドの騎士団の維持の資料に目を通していたのだが、この費用を見積もった者を連れて来い」 「か、畏まりました」 王となってから見えて来たものは、杜撰な国の体制だった。 上流の人間になるほど、水面下で国民の金を横領し、自らの懐を温めていた。 民に厳しい税金を科せ、国が発展していない実情が見えてくる。 役職に関わらず、国の害となっている者をあぶり出しては強制労働を強いた。 違法な酒や武器を売る、街の裏を仕切る組織のアジトに騎士団を送り込み皆殺しにした。 ただでさえ冷酷だと噂されていた所に、更に何枚も重ねるようにヴァーンフリートの噂が流れてくる。 国民はヴァーンフリートを怯えるようになるが、この政策を初めてから国は少しずつ豊かになっていった。 治安は良くなり、税金は下がる、更には公共の施設が充実して、民の暮らしは安定していった。 しかし悪い噂が邪魔をしているせいか、ヴァーンフリートの功績だとは思える者は少ない。 半年に一度の国王演説の日。 王宮のバルコニーに立ち街を見下ろすヴァーンフリートは、この国の事だけを考えていた。 「本日はよく集まった。コルキドの民よ。我はこの国を、民を豊かにする。何か言いたい事がある者は、我の元に直接申し出ろ。以上だ」 そのスピーチはあまりにも短かった。 一切表情を変えずに言い切ったヴァーンフリートは、背を向けて王宮の中に戻っていく。 前代未聞の冷徹な王として、近隣の街にも噂は広がった。 噂には尾ひれがつき、気に入らない人間は斬り捨てる冷酷な王などと呼ばれている。 国が豊かになっているという事に気付きはしているものの、その噂の為に王を支持する人間は少なかった。 ある日、大臣がいつもと違う様子で王に話しかける。 「ヴァーンフリート王。直々に謁見したいという者が来ているのですが、如何なさいますか」 基本的には王への直談判などは許されていない国であったが、王はスピーチで直接話をしろと言っていた。 それでも、今までこの冷酷と名高いヴァーンフリートに対して直接物を言うような国民は現れていない。 「うむ……玉座へ通せ」 王は立ち上がると私室から玉座へと向かった。 場内は緊張に包まれる。 もし、失礼があればその人間はすぐに殺されてもおかしくはないだろう。 まさにこの場所で、メイルフリートが殺される瞬間を見たのならば恐怖するのは当たり前だった。 大臣が傍にひれ伏した。 「王、準備が整ったようなので、客人をお呼びしても宜しいでしょうか」 「構わぬ」 王の声を聞いて兵士が扉を開ける。 そこには、老人と女性が立っていた。 「入れ。王にくれぐれも失礼のないように」 兵士が脇に立つと、老人と女性は王の眼前でひれ伏した。 「この度は、謁見をお許し頂き真にありがとうございます」 「面をあげろ。要件を話してみろ」 「はい」 老人と女性が顔を上げると、どこかで見覚えがあった。 「お前達は……確かあの村の……」 「やはり……貴方様でしたか…ヴァーンフリート王……!」 女性は目に涙を浮かべている。 2人はあの吹雪の夜に出向いた村の村民だった。 老人は、横の女性にあまり興奮するなという合図で、手のひらを上下に振ってから話し始める。 「本題の前に、私めがここに来た経緯をお話しても宜しいでしょうか?」 「うむ……」 「この数ヶ月、村には物資が以前よりも届くようになりまして、新しい王に感謝をしておりました。それで…先日のスピーチを聴きに村から足を運ばせて頂いたのですが……」 黙って聞いていた女性が口を挟む。 「あの方は吹雪の夜に村を救ってくれた騎士様だって私が話したんです。おじいちゃんは目があまり良くなくて、王様のお顔は良く見えないから分らないって言うんですけど、私は絶対そうだって思って……ですね……」 女性は興奮気味に話し続けたが、その口の聞き方に兵士や大臣が睨みを利かせているのを感じ取って勢いが尻すぼみしていく。 「すみません、村の出ですので、口の聞き方がなっておらず…」 ヴァーンフリートは表情を変えずにジッと2人を見据える。 「良い。続けろ」 女性の顔がパァっと明るくなった。 「ありがとうございます!それで、あの時のお礼をまともに言えていなくて…それで……その……」 老人が変わって話を続ける。 「この子の両親は、あの日魔術師達に逆らったとして殺されておるのです。絶望の淵から救ってくれた王様に恩返しがしたいと言い出しまして……お側にいたいと申しておりまして……その……」 「なるほどな……」 ヴァーンフリートは一つ頷くと女性の目を見る。 その真っ直ぐな瞳は、嘘をついているようにも、裏があるようにもとても見えなかった。 しかし、大臣が口を挟む。 「横から失礼します。もし今の話が全て本当だったとして、コルキド領の端の田舎者が王に仕えたいというのは、いやはや…これも前代未聞の珍事となってしまいま……」 「大臣。この者達は我に話をしに来ている。余計な口を挟むな」 王は大臣を睨みつける。 「し、失礼しました」 ヴァーンフリートは女性に向き直る。 「そうだな……我はこの国を治める王として、世継ぎを残さなければならない。仕えるというならば、我の妃になるか?」 場内が静かにどよめく。 大臣も言った通り、庶民の村の出身者を王宮に仕えさせるのは勿論の事、王妃にするなど前代未聞どころの騒ぎではない。 女性は少し間を置いてから言葉を返す。 「私が……王妃様に……ですか……?」 「も、申し訳ございません、コラ!王のご冗談を真に受けるな!」 老人も慌てた様子を見せるが、王は至極真剣な目で答える。 「冗談等ではない。我は真面目に問うている」 女性の顔が更に明るくなった。 「ほ、本当ですか!?私で良ければ…是非!!」 流石に大臣もこれ以上は黙っていられなかった。 「お待ち下さいヴァーンフリート王……このような事はもっと時間を掛けてお決めになられた方が……」 「このような立場、更に民には恐れられているのだろう?縁談など好き好んで持ちかけては来ないだろう。それとも大臣には他に宛てがあるのか?」 「い、いえ……」 「ならば決する」 自分の命は永遠ではない。 いつ父のように病に倒れるかも分らない。 自分の思想を国に残す為にも、世継ぎは必ず必要だ。 ヴァーンフリートは国の為、彼女を王妃にする事を決めた。 婚礼は国を上げて盛大に行われる予定だったが、ヴァ―ンフリートの意向により王宮内でひっそりと取り行われた。 民は、心の底から2人を祝福してはいない事は、ヴァーンフリートも知っている。 形式上で国の資産を無駄にするくらいならば、もっと民の為に使う事を選んだ。 そんなヴァーンフリートの真意を知っている者は王妃以外にはいないだろう。 冷酷な王の心が、少しずつ溶けていく。 程なくして、王妃が身籠ったと知らせが入った。 大臣は王の機嫌が良くなるであろうと、王に知らせにその私室へと向かう。 ノックしてからドアを開けると、王は書物を眺めながら頭を抱えているようだった。 「ヴァーンフリート王……ご報告ですが、王妃様がご懐妊なさったと知らせが入りました」 「ほう……そうか」 王は書物に目を向けたまま、険しい表情のままだった。 王の喜ぶ顔が見られると期待した大臣は、肩を落としてその場を後にする。 ヴァーンフリートが入念に目を通しているのは、ガルヴァンド帝国からの信書だった。 コルキドの更に北に位置する小国の帝国は、唯一コルキドと密にやり取りをしている国だった。 しかし最近になり、軍事力を上げようと見受けられる帝国に対して、ヴァーンフリートは何か引っ掛かりを覚えていた。 月日が経ち、王妃の出産予定まで半月程となった。 その夜、ヴァーンフリートが私室で書物を漁っていると、慌ただしい様子の兵士が報告に来る。 「ヴァ、ヴァーンフリート王!報告します!エーデルラインが淡い光を放ち始めました」 「なんだと?それは真か?」 「はい!しかとこの目で確認いたしました」 「そうか……それでは心映しの儀の準備をするよう司祭に伝えるのだ」 コルキドに伝わる三種の神器の一つ、神器エーデルライン。 この氷の盾から、適合者が生まれたという知らせが入った。 国の大事な行事である心映しの儀。 ヴァーンフリートは王妃の出産予定が、その月の新月だという事を再度確認する。 それは心映しの儀と同じ日であった。 大臣を呼び出し、王妃にそれを伝えるように言うと、ヴァーンフリート自らも心映しの儀の準備へと取り掛かった。 ――そして、新月の日 心映しの儀は恙無く(つつがなく)進行していたはずだった。 問題は、盾が今までにない反応をしてしまった事だ。 歴史上、あり得ない自体に、司祭や大臣は頭を悩ませている。 ヴァーンフリートは王妃の事が頭に過ぎったが、今は国の大事な行事。 コルキドの新たな盾は、この国に絶対に必要なものだった。 王宮内の一室で行われた協議は数時間に及んだ。 結果、正式にエーデルラインの継承者は決まり、皆ホッと胸を撫で下ろした。 全ての行事が終わると、術士が扉の外で待っていた。 「ヴァーンフリート王!大変でございます!王妃様が………!!」 その顔色から、何か良くない事が起きている事を直感する。 扉を出ると、王宮の長い廊下を全力で走った。 王妃のいる部屋の前に立つと、赤子の泣き声が聞こえた。 「産まれたのか……」 そっと扉に手をかけて中に入る。 「王様!!こちらへ……!!」 術士が手を引いて連れて行く先……そこには顔に白い布が掛けられた人の姿があった。 「そんな…………」 出産時に母体が傷つき亡くなる確率は、この時代決して低くはなかった。 しかし、まさかそんな事が自分の妃に起こるなどと、考える事をしていなかった。 その場に崩れ落ちるヴァーンフリート。 人前で、涙を見せるのはこの時が初めてだった。 声を出して……ただ泣けるだけ……泣いた。 そこに助産師が赤子を抱いて近寄ってくる。 王は、その手の中の赤子を見る前に、涙を拭った。 「王……元気な女の子です……」 助産師は、王に降りかかる不幸を前に、なんと声を出せば、王の怒りに触れないかと考えているようだ。 ヴァーンフリートは、泣くのを止めて子を抱える。 「お前は……我に残された……最後の希望だ……」 王は、噛みしめるように言いながら、よく眠る赤子の顔をまじまじと見つめる。 「名は………そうだな……ヴァレアナ……。そうだ……お前の名はヴァレアナ」 氷の国の冷酷な王は、赤子の小さな手を指で摘みながら誓いを立てた。 「このヴァーンフリート。何があろうと、お前だけは離さない」 +義侠の令嬢シャンティ 「えーっと……ほ、本日付で……皆さんに合流させてもら、させていただきます……シャンティだ、です!よ、よろしくねっ!」 大陸の西に位置する砂漠の町『ジール』 帝国軍と対立しつつ、町や周囲の遺跡を管理、整備することを目的とした町の自警団に、今日、新たなメンバーが加わることとなった。 (あぁああああああ……なんだよ「よろしくねっ!」って……あんなに練習したのに……!) 「あっはっはっはっは!そんなに緊張しなくてもいいぜ、お嬢ちゃん!俺はデューンってんだ!よろしくな!」 「歓迎するよ。シャンティさん。僕はドゥーナです」 「おぉ?あ……よ、よろしくお願いします!」 シャンティの緊張とは裏腹に、温かく新入りを歓迎する自警団のメンバー。 その様子を受け、シャンティ自身も少しホッとする。 だが、入口のドアが開き、新たに入ってきた男により、その緊張は更に増すことになる。 「お!おはようございます、団長!」 「お疲れ様です。シャフールさん」 団員達が口々に挨拶をする若い男。 自警団の団長シャフールだ。 「お、おはようございます!」 「……おはよう」 団員に続けといわんばかりに、少し上擦った声で挨拶をしてみるシャンティだが、返答の声はとてもか細い、そして感情の薄いものだった。 「気にすんな!団長はもともと、ああいう人だからな!怒ってるわけじゃねえから安心していいんだぜ?」 「ふふ。むしろ、声に出して挨拶をする方が珍しいくらいだよ。ご機嫌なのかな?」 シャンティが落ち込むことを危惧した団員達がフォローに入ったが、今の彼女の心には、そんなもの必要ない程の喜びが満ち溢れていた。 もちろん、言葉にしてかけてもらえた挨拶に対してもだが、それ以上に「この人と一緒に戦える」ということへの喜びだった。 シャンティは既に彼を知っている―― ――数日前 「怯むな!迎え撃て!ガルヴァンドの威光を知らしめるのだぁ!」 「「うぉおおおおおおおおお!」」 ジール近郊に点在する古代遺跡。 そのうちの一つ。 宝物の眠る神殿広場にて、帝国軍と盗賊団による戦闘が繰り広げられていた。 宝を狙ってやってきた帝国軍と、遺跡を徘徊していた盗賊団が鉢合わせした結果、発生した戦闘だった。 「ちっ……お頭ぁ!ぞくぞく湧いてきますぜぇ!」 「わかってらぁ!おい、シャンティ!何人か連れて右側から回り込めぇ!」 「あいよっ!」 開戦時は数人同士の小競り合い程度のものだったが、互いが増援を呼び、今となっては数十人規模の戦闘へと発展していた。 そんな戦場の最中、場に似つかわしくない少女が一人。 シャンティの姿があった。 「てめぇら!ついてきなっ!」 「任せな、お嬢!」 シャンティは頭領の言葉に応え、団員を五人ほど連れて広場の脇道へと入る。 「上から岩を落としてペシャンコにしてやるぜっ!」 「おぉ!過激だぜ、お嬢!」 均衡した状況を打開すべく、トラップを作動させるために別行動を取った一行だが、その直後、戦場の様子は一変する。 「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 「な!?今のは……お前ら!あとは任せるぞ!!」 響き渡る魔物の怒号。 嫌な予感を察知したシャンティは、その場を部下に任せて、先の広場に戻る。 「一体何が――って、おいおい……ちくしょう……!」 「シュルルルルル……!」 広場に戻った彼女の目に映ったのは、全長十数メートルはあろうかという巨大な蛇の魔物と、まさに睨まれた蛙のように動けずにいる盗賊団の面々。 「か、隠れてくだせぇ、お嬢!!」 戻ってきたシャンティの姿に、とっさに声を出してしまう団員。 その声をきっかけに、魔物は盗賊団に襲い掛かった。 「ぎゃあああああああああ!」 「くそったれがぁあああああああああ!」 帝国軍が召喚した魔物は、たった一匹で戦況を塗り替えていく。 「てめぇ……アタシの家族に……何してんだぁあああああ!!」 仲間の危機を救うべく飛び出そうとしたシャンティだったが、その頭上を影が飛び越えた。 「えっ?」 「……」 颯爽と蛇の前へと躍り出た男。 男は無言のまま目を閉じ、手にする杖に力を込めている。 「あぁん?誰だこいつは!?」 「お頭ぁ!こいつ、ジール自警団の団長シャフールですぜっ!」 「自警団だぁ?何するつもりだ……?」 突如現れたシャフールを警戒するように見守っていた魔物だが、ただ目の前に仁王立ちするだけの彼に対し、すぐに攻撃態勢へと移行する。 「シャアアアアアアアアアア!!」 やられる。 シャンティが予感した瞬間、シャフールは目をカッと見開き、呼応するように杖が眩しく輝いた。 「シャアアア!?」 周囲の砂が巻き上げられるようにして魔物を包み込み、瞬く間に球状に押し固めていく。 そこにかけられているであろう凄まじい圧力により、魔物は圧迫され、その塊は見る見るうちに岩のように硬度を増す。 「な、何だとぉ!?」 これほどの術士の登場を想定していなかった帝国軍の兵士達に動揺が走る。 「今だぁああああ!押し返せぇえええええええええ!」 頭領の怒声が号令となり、傷つきながらも立ち上る団員達は、帝国兵へと襲い掛かる。 「てっ、撤退だぁああ!退けぇええええええ!!」 流れるように戦線は押し切られ、あえなく退散していく帝国軍。 その間、シャンティはシャフールの姿から目を離すことができなかった。 彼女は不思議と自身の鼓動が強くなっていくのを感じる。 シャフールの周囲に溢れる魔素がそうさせているのか、彼女の目には、その姿がとてもキラキラと輝いて映った。 「…………っ!」 だが、強大な力を持つ魔物を、長時間たった一人で拘束し続けるには、シャフール一人の魔力では無理があった。 拘束していた岩には裂け目が走り、その隙間を突いた魔物は、尾を鞭のようにしならせて彼を打つ。 「……ぐはっ!」 重量と遠心力により、とてつもない威力となった攻撃をその身に受けたシャフールは、軽々と吹き飛ばされ、硬い石壁へと叩きつけられた。 撤退していく帝国兵たちを追撃していた盗賊団は、すぐさま踵を返して魔物を討ちに戻るも、辿り着くまでにかかる時間はシャフールが噛み殺されるのには十分すぎるものだった。 「ちっ!間に合わねぇ!」 パックリと大きな口を開け、魔物が今まさにシャフールに食らいつこうとした時―― 「おらぁああああ!どこ見てんだ、てめぇえええ!」 突如、下顎を叩き斬られた魔物。 それをやってのけたのは、自分の身の丈ほどもある大剣を振るうシャンティだった。 「シャアアアア!!」 「これで終わりだ、ノロマぁああああああ!」 返す刃で魔物の首元を華麗に斬り飛ばす。 シャフールの術で弱っていたとはいえ、巨大な魔物を見事に倒したシャンティの姿に、一同は息を呑んだ。 「見たかお前ら!アタシだってなぁ――うおっ!」 鼻高々にポーズを決めようとした彼女だが、その背中にドンッと重たくのしかかる何か。 「……」 「お、おい!大丈夫か、お前!?」 戦場に飛び込んだシャフール。 恐らくは攻撃を受けた直後に気を失っていたのだろう。 力なくうなだれた彼の身は、そのままシャンティの背に預けられる形となっていた。 彼を抱きかかえるようにしながら、どうしていいかわからずに立ち尽くすシャンティ。 「うわぁ……」 すぐ傍に見える眠るシャフールの顔。 彼女が感じる心臓の鼓動の高鳴りは、戦闘による高揚とは明らかに違うもの。 「……え!?嘘だろ!?これってもしかして……!」 彼女の心は、新たな感情の芽吹きを予感した―― ――遺跡での戦闘直後 「……う……んん」 「うぉ!?えっと、えっと!」 傷だらけの姿となり、気絶していたシャフールを床に寝かせ、治療を行っていたシャンティ。 シャフールが目を覚ましそうになった途端、なぜだが無性に逃げないといけない衝動に駆られ、彼女は部屋の外へと飛び出す。 そこで、たまたま様子を見に来た頭領、つまりは彼女の父に出くわした。 「何やってんだ?お前」 「あっ!お、親父!あいつが目を覚ましたぜ!」 「……そうか。ちょっくら話を付けてくる……お前は外に出てな」 「はぁ!?なんでだよ!アタシが治療してやったってのに――」 バタンッ! と勢いよく閉められたドアの音にシャンティの声は遮られた。 「ちょっ!?クソ親父め!」 部屋を閉め出されたシャンティは、そっとドアに近づき、中の声に聞き耳を立てる。 盗賊団の頭領である父と、それを助けたジール自警団の団長シャフール。 いけないことだとは思いつつも、二人が何を話すのか、気になって仕方がなかった。 「気が付いたか。ここは俺たちのアジトよ」 「……」 「ふん。噂通り無口な野郎だ……」 「……」 「まぁ、それならそれでいい。手短に済ませられそうで何よりだ。おめぇさん、何で俺たちを助けた?」 「……帝国軍は敵だ」 「そりゃ違いねぇが、自警団のあんた達にとっちゃ、俺ら盗賊も敵なんじゃねぇのか?」 「……君達のことは知っている」 「けっ……ただの英雄ごっこって訳でもなさそうだな」 シャンティの父が率いる一団は、盗賊団と名乗りつつも、その行いは義賊的なものだった。 帝国軍の物資を奪っては貧しい村々に恵んだり、武器を奪って戦争の妨害をしたりと、その行動は多岐に渡る。 そして、今回戦場となった遺跡は、この盗賊団にとっての故郷であり、家でもあった。 表立っては知られていないはずの情報だが、自警団のシャフールは確かにそれを知っているようだった。 「……我々と協力を」 「あぁ?俺らと手を組もうってのか?」 話を聞いているシャンティには良い話に思える。 今回のような大規模戦闘が続けば、歴戦のならず者達とはいえ、いずれは消耗し、圧倒的な物量と兵力の前に屈してしまう。 立ち向かうためには大きな力、より多くの同志が必要だ。 「断る!」 「……何故?」 「うるせぇ。話は終わりだ。もう歩けるだろ?助けてもらったことには礼を言うが、こっちも借りは返したつもりだぜ……」 急かすようにシャフールを帰らせる父。 諦めたシャフールが部屋から出てくるのを感じたシャンティは、慌てて物陰へと身を隠す。 シャフールがアジトを去ったのを確認し、部屋へと殴りこむように飛び込んだシャンティは声を荒げた。 「何でだ、親父ぃ!自警団と協力すれば、アタシらだってもっと楽に仕事ができる!」 「けっ……やっぱ盗み聞きしてやがったのか」 やれやれと言わんばかりの顔を娘へと向ける父。 「詳しく知らないだろうが、俺たちは……病気、家の問題、いろんな事情を抱えて町から追われた、見捨てられた連中の集まりだ」 父は静かに語り出した。 「だが、自警団の連中は違う。人々から求められ、称えられる、そりゃもう眩しい存在さ。そんな奴らの隣に、俺たちの居場所なんてねぇのさ。手を取り合ったところで、俺たちがどんな目で見られるかわかりきってる……」 「そ、そんなことやってみないとわからねぇだろ!?」 「何よりなぁ、少しいい顔されたからって、俺が真っ先に手を取りに行くなんてことやっちゃいけねぇのさ。それが頭領としての、家族であるアイツらを守る家主としての責任だ。これは娘のおめぇの言葉でも曲げられねぇ!」 「でも、このままアタシ達だけで帝国を敵に回し続けることがヤバいってことくらいわかってんだろ!?せっかく協力しようって言ってくれる人がいたんだ!手を取り合うのがそんなに悪いことなのかよ!」 「……悪かねぇさ。ただ、それは今回じゃなかった。アイツらじゃなかったってだけの話だ」 「いつだよ!?そんな日、いつ来るんだよ!?誰となら組めるんだよ!?」 「……さぁな」 「なんだよそれ……情けねぇ!アタシは親父とは違う!アタシは諦めねぇからな!!」 「あぁ?今日はやけに食い下がるじゃねぇか。いつもはすぐに拗ねて逃げ出すってのによぉ」 ギクリとした。 いつも簡単に父に説き伏せられてしまうはずなのに、今日に限ってはいつもと違う。 絶対に諦めたくないという気持ちが沸々と湧いてくる。 何故だろう。 素直に自分の心を問いただし、言葉を選ぶ。 「そ、そりゃあ……せっかくの機会だし……別に悪いヤツじゃなさそうだし……」 「おい……おいおい!ちょっと待て!てめぇ、あのシャフールって野郎に惚れたんじゃねぇだろうな!?」 「……は?」 父の言葉により、その感情の正体を悟るシャンティ。 「いやいやいやいや!あ、あれだけの力持ってるんだし、せっかくシャフールさんの方から声かけてもらったんだぜ?そんな簡単に無下にすんのも悪いんじゃないかなってちょっと思っただけだよ!」 (そうだよ!!ちょっと助けられて、助けてをやったくらいで、簡単にヒョイヒョイ惚れてたまるかよ!!) 「シャフールさんだぁ……!?とりあえずシャフールの野郎は死刑決定だ!おめぇの目の前でぶっ殺して諦めつけさせてやる!」 「はぁ!?ざけんなよクソ親父!その前にアタシがおめぇをぶっ殺す!!」 「上等じゃねぇか、ついこの前まで寝小便たれてた小娘が!一度でも俺に勝てたことがあったかよ、あぁ?」 「ぜっっっってぇブッ殺す!娘に向かって気色悪ぃこと抜かしてんじゃねえぞクソバカ親父!!」 ――――― ――― ―― ― 一晩中続けられた決闘さながらの親子喧嘩。 いつの間にか騒ぎを聞きつけた団員達もその場に集まり、決着の様子を見守っていた。 「うぉおおおおおお!お嬢の勝ちだ!!」 「とうとう、お頭をぶっ飛ばした!流石だ、お嬢!」 「ふんっ!世話になったなクソ親父!この想いはアタシだけのもんだ!やりたいようにやってやる!」 「ぐぅ……あぁ、畜生め。どこへでも行けってんだ、じゃじゃ馬娘が!」 父に真っ向から挑み、初めて勝利したシャンティ。 気持ちと共に力まで一緒に沸いてくるのをハッキリと感じる。 「あぁ……お嬢!どうかお元気で!!」 「あんな男のところに俺たちのお嬢が……うぅ……くぅうう……」 「ちげぇよ!!親父もおめぇらも勝手なこと言いやがって!!」 (そんなに言われると変に意識しちまうじゃねぇかよ!くっそ!まだだ!まだ完全には落ちてねぇぞ……!) 「……うっ……うぅ……」 「あ……へへっ……湿っぽくなっちまうじゃねぇか。じゃ、アタシ行くよ……体、気を付けろよ」 「まったく……変なところだけ母親によく似てやがる……自分が本気で決めた道なんだ。てめぇ、中途半端なことすんじゃねぇぞ?」 「おぅ!」 その日、シャンティは家である盗賊団を抜け、ジールへと一人で走り出した。 揺れる想いを胸に秘めながら。 「で、なんでゴミ拾いなんかしなきゃなんねぇんだよ……?」 団員達との顔合わせを無事に済ませ、遂に始まったシャンティの新しい日常。 彼女にとっての初の任務は遺跡の安全確認と整備。 だが、その内容は遺跡周辺の清掃だった。 いきなり帝国軍とドンパチなんてことにはならないにしろ、要人の護衛、魔物の討伐、そんないかにもな任務を想像していた彼女にとって、こういった任務には魅力を感じられずにいた。 「おーい!調子はどうだいお嬢ちゃん?」 完全に気を抜いていたシャンティの元へ、デューンとドゥーナが不意を突くようにやってきた。 「うぉ!?あ、えっと、なかなか大変な任務ですね!」 (あっぶねぇ……また素が出てたぜ……) 盗賊団の頭領の娘であるシャンティは、同盟の誘いを断った父とは違う生き方を選んだ。 それは、シャンティが一個人として自警団に加わり、シャフールと共に戦う道。 そのため、あまりおおっぴらには素性を明かせないのである。 「はっはっは!これくらいの任務ならまだまだ軽いもんだぞ!」 「ほらシャンティちゃん。手が止まってるよ。遺跡周辺の環境整備も立派な任務です」 「そりゃ、そうかもだけど……」 「さては、魔物がババーン!とか、野盗をズドドーン!みたいなのを期待してたか?」 「そう!それそれ!魔物!!野盗!!」 「ふふ。それは心強い。そういった任務もないわけでもないよ。毎回ではこっちの身が持たないけどね」 「ほほう……?」 その言葉に強く好奇心が刺激され、楽しみが増えたと口元がにやけるシャンティ。 「実際のところ、盗賊まがいのことをする連中もいてね。貴重な遺跡の中を荒らしまわる乱暴な――」 「アイツらはそんなことしねぇよ!!」 瞬間、浮かんできた親父の、アイツらの顔。 皆を馬鹿にされたかと思うと、どうしても我慢できなかった。 思わず大声で怒鳴ってしまったシャンティに、驚いたまま動けずにいるデューンとドゥーナ。 「……お、お嬢ちゃん??」 「あ……その……昔、盗賊団に知り合いがいて、すごく良くしてもらったことがあるっていうか……あはは……」 (あ……つい……やっちまった…………) 「そうだったんだね。ゴメン。その知り合いの人や盗賊団の事を悪く言ったわけじゃないんだ。どんな境遇であれ、君の言うような良い人もたくさんいるのは知っているよ」 「でもなぁ、中には悪い奴らだっていやがるのさ……そういう奴らをやっつけるのも俺達の仕事の一つってわけだ!はっはっは!」 「……そ、そうだよな!アタシも!アタシも……大きい声出してゴメン……なさい……!」 「いやぁ、ビックリしたぜ?熱くなった途端に性格が変わったみたいによぉ」 「え?あ、あー……そ、そういえば、シャフールさんのお姿が見えないようなー?」 (そ、そう!これはこの場を誤魔化してるだけで、決してシャフールさんの事が気になって仕方ないわけじゃねぇ……!) 「団長ならさっきパンパンになったゴミ袋を三つも抱えてゴミ捨て場の方へ歩いて行ったぜ」 「たまには気を抜いてくれてもいいんだけど……我々も負けていられないよ!」 「は、はい!頑張ります!」 (団長っていっても、椅子で踏ん反り返ったりしてるわけじゃねぇんだな……) ――翌日 「今日はこの遺跡の調査だ。まだ探索しきれていない箇所も多いから、慎重にな!」 「わかりました!」 (懐かしいぜ、この遺跡。ガキの頃によく遊び場にしてたっけ) 「えっと……今回調査する予定の場所はこの辺りだね」 未完成の内部地図を広げながら、ドゥーンが調査予定の箇所を指し示す。 「あー……そこなら完全に崩落してて、中にはネズミ一匹入れねぇよ?」 ヒョコッと地図を覗き込んだシャンティが指摘する。 「え?シャンティちゃんここに来たことがあるの?町の指定危険区域だよ!?」 「え!?あ、えっと……なんか、そんな予感がするなー!なんて!おほほほほ!」 (そうなのかよ!親父達とよく来てたから、安全な場所だと思ってたぜ……!) 「はっはっは!さては、奥の方は面倒だから、適当に埋めてさぼろうって魂胆か?策士だねぇ!」 「あ、あちゃー!ばれちゃったかぁ!おほほほほほ!」 (何とか誤魔化せたか!?マジでちょっと気を付けねぇと……) 「…………」 ――さらに翌日 「報告があったのはこの辺りだね。デザートホーンリザードの群れが発生してるって話だけど」 「なんか恐そうですねー!」 (そうだよ!チマチマした任務じゃなくてこういうのを待ってたんだよ!いかにも骨のありそうな響きの獲物じゃねぇか!) 「はっはっは!まあけっこうでかいしな。一般人からすりゃ恐いもんだろうぜ!」 「……来るぞ」 何かを察知したシャフールの声に反応する一同。 期待に目を輝かせるシャンティの目の前に、無数のトカゲが地中から姿を現した。 「さぁて、おでましだぁ!」 「シャンティちゃん。無理はしないようにね!デューイ。君もあまり油断しすぎないように!」 体長は1~2mほどで、角ばった鎧のような皮膚を纏っている。 よくよくその姿を観察するシャンティだが、それはどこか見慣れた形をしていた。 「え?あれ?こいつら……ツノヘビじゃん」 「ツノヘビ??」 「アタシらのところではそう呼んでたぜ。じっくりと焼いて塩を一振り……これがたまんねぇんだよなぁ……なぁ!?」 (くっそぉ!もっと強そうな魔物を想像してたってのに!でも、これはこれでおいしいか……?) 振り向きざまに、満面の笑みで微笑みかけたシャンティの前に並んでいたのは、ポカンとした表情のまま立ち尽くす自警団の三人。 「……あれ?食わないの……?」 「すまねぇ……食えるなんて聞いたことなかったもんでつい……」 「え……?あ……村の風習というか、珍味的なものというか……あはは」 (おいおい、普通は食わねえのか!?親父がこの辺りの名物だって言ってたのに…あ、アタシ騙されたのか!?あのクソ親父ぃ!!) 「…………」 「なんともワイルドな生活をしていたようだね……あれ?どうかしましたか?団長」 「……いや」 ―― 一カ月後 毎日欠かさず自警団に顔を出し、任務をこなし続けたシャンティは、一人前の自警団員としての存在を団内に示し、その信用と評価を高めていった。 ここは自警団指令部が本部を置く兵舎。 ……ィ―― ――あれ……?誰かに呼ばれたような…… ……ティ―― ――シャフールさんの声……?あぁ……あなたの声がこんなに近くに聞こえます…… ……ンティ―― ――いや、近いですよシャフールさん……ダメですってばぁ…… シャンティ―― ――いやいやいやいやいやいや近い近い近い近い近い近いって!! 「―――――――ッ!……って……ふぁ?」 気が付くと、そこにはいつもの指令室の風景。 どうやらまた仕事中に寝てしまっていたようだ。 寝ぼける頭をポリポリと掻きながら、ゆっくりと身を起こす。 「ふぁあ……!」 (それにしても、あんな夢まで見ちまうなんて……やっぱり……) 「……起きたか?」 「あ、シャフールさん。わたし、また寝ちゃったみたい……ふぉおおおおおお!?」 目覚めて間も無いというのに、瞬間的にシャンティの脳は覚醒。 その様子をシャフールに見られていたことにやっと気が付く。 乙女として、シャフールの前で粗相がないかを急いで分析。 「えっと……えっと……」 (寝癖は……問題なし!服装も……乱れてないな!よだれは……垂れてないぞ!寝言は……わからん!いびきは……わ、わからん!クマは……よし、いないな!え?クマは?) 足を掴まれ、ぷらぷらとシャフールの手にぶら下がる愛用抱き枕ならぬ、抱きぐるみのクマ。 「あぁああ!シャ、シャフールさん、それ、それはですね……えっとですね……!」 「……」 「そ、そう!これは、知り合いの子にプレゼントとして用意したものでして!」 自分に似合わないものだと決め込んでいるシャンティは、クマの存在の説明をしようと必死に理由を探す。 そんな姿に、彼の顔がわずかに微笑んだように見えた気がした。 「……可愛いクマだ」 「え……?あ、あぁ!ありがとうございます!!」 (いやいや!勘違いすんなよ!?クマだから!可愛いのはクマだから!!) 「……今日は休んでいい」 「え?」 「……疲れもたまっているな。丁度、今日祭りがあるから、顔を出してみるのもいいだろう」 一カ月足らずとはいえ、ずっとシャフールを見続けてきた彼女。 その言葉は、事務的な内容だったが、彼女にとっては初めてかけられた思いやりの言葉。 「あ……」 普段はほとんど言葉を口にしないシャフールの気持ちに、呆然と立ち尽くすシャンティ。 「……?」 「い、いえっ!なんでも……なんでもありません……!」 嬉しい。 感情の波に呑まれそうになる彼女。 「……あの、シャフールさん。その……仕事が終わってからでいいんで、ちょっと、ほんのちょっと、一緒にお祭りどうですか?」 彼女同様、休暇を取らず働き続けていたのはシャフールもまた同じだった。 頂戴した思いやりの感謝に対し、自分にも何かできないかと思うと、自然と口が動いていた。 「あれ?今アタシなに言いました!?わ、忘れてくださいっ!!」 (ボケーっとなに口走ってんだバカ野郎!うわわわわ!顔から火が出そうだっ!) 「……わかった」 「え?」 「……なるべく遅くならないようにしよう」 「ほ、本当ですか!?じゃ、じゃあ、中央広場の噴水の辺りで待ってますんで!」 「……わかった」 「で、では、失礼しますっ!」 (やった!よくわかんないけど、やった!!シャフールさんとお祭り!くぅううううう……なんか燃えてきたぜちくしょおおお!) 淡い恋心を抱く乙女の勝負が幕を開ける。 毎年この時期に三日間かけて盛大に行われる『星見祭』 一年の中で、夜空に浮かぶ星々が最も綺麗に見られるとのことから名付けられたこの祭り。 マーニルの星詠みが足を運ぶことも多いと言われ、遠方からも多くの観光客が集まり、大変な賑わいをみせる。 また、ロマンチックな星空を堪能しようと、夜には恋人連れで溢れ返ることでも有名である。 自室に戻っても特にやることのなかったシャンティは、指令室から直接祭りへと赴いていた。 「くんくん……このうまそうな匂い……たまんねぇ!はははっ!」 休日の開放感と祭りの空気は、普段から口調にも気を付けて団員と接する彼女にとって、またとないストレス発散の助けとなった。 「ちょいとそこのお嬢ちゃん!」 「え?アタシか?」 シャンティに声をかけたのは、女性ものの衣服を扱った小さな露店商だった。 「そうそう!あんた、今夜のデートに備えて、いろいろと用意しなきゃいけないものもあるんじゃないかい!?」 「な!?デ、デートなんかじゃねぇよ!ただ、ちょっと一緒に息抜きでもと思ってだな……」 「そうかい、そうかい!で、こんなのどうだい?」 シャンティの話を聞き流しながら、自信満々に商品を売り込んでくる女主人。 それは伝統的な衣装をモチーフに、細かな装飾が施されたなんとも美しい一品。 こういったものにはあまり関心を持ってこなかったシャンティですら、つい目を奪われてしまう。 「お……おぉ……!あー……いや、でもやっぱりアタシにはこういうのは……」 「何言ってんだい!男ってのは普段とのギャップってのに弱いもんさ!こういう時こそ自分をアピールする大チャンスだよ!?」 「……や、やっぱり女の子らしい恰好した方が……その……男ってのは喜ぶもんなのか?」 引き込まれるように女主人との間合いを詰めていくシャンティ。 「もちろんさ!可愛い女が嫌いな男なんていないよ!あいつらみんな単純なんだから!」 「そ、そうなのか?」 「もしこの服がご入用ってんなら、特別にこの髪飾りとネックレスも付けようじゃないか!」 「なんだって!?そりゃ随分と太っ腹だな!」 「で、どうするね?このチャンスを逃したら、その男が他の女のとこにいっちまうかも――」 バンッ! と勢いよく店のカウンターを叩いたシャンティ。 「買った……!」 今月受け取った給料の半分以上を一気に放出することになるにも関わらず、その目に迷いはなかった。 そのまま服を着せてもらい、商人の計らいで髪型までセットしてもらったシャンティ。 「へへっ!やっぱちょっと恥ずかしいな……!」 「よしっ!最後の仕上げだよ!」 店の奥から何かを持ってきた女主人。 それをシャンティの首元に近づけ、シュッと一吹きする。 「お?なんかいい匂い……」 「わたしが旦那を落とした時に使った香水だよ!サービスしといてやる!」 「何から何までありがてぇ……!恩に着るぜっ!おばちゃんっ!」 「こういうときは嘘でも『お姉さん』って言うもんだよ!あんたも負けんじゃないよ!」 「おぅ!サンキューな!」 あとはシャフールを待つだけ。 徐々に落ち始めた陽を眺めながら、それを胸にしまい込むように心をたぎらせていく。 勝負まであと数時間。 軽く出店を回りながら、雰囲気を満喫するシャンティ。 盗賊団として生きてきた彼女にとって、町をあげての祭りごとに参加するこの機会は、大きな衝撃だった。 まるで未知との遭遇ともいえる様々な発見や体験に胸躍らせる。 「くぅううう!楽しいなぁ!アイツらもいつか参加できるようになる日が来るかなぁ……」 ふと盗賊団にいた頃の思い出が頭をよぎり、つい感傷的になってしまう。 「大変だぁあああああああああああああ!」 だが、そんな彼女の複雑な気持ちを吹き飛ばすように響き渡った悲鳴。 はっと我に返ったシャンティは、騒ぎの中心を探して駆け出す。 「助けてくれぇええええええええ!」 町の中央広場。 最も人混みで溢れる場所で事件は起こっていた。 「何ごとだってんだ!?」 町の自警団の一員として、顔が売れ始めていたシャンティ。 駆け付けた彼女を見つけた町の人間が事情を説明しにくる。 「見世物屋の檻から魔物が逃げ出したんだ!」 「はぁ!?なんでそんな危ねぇもん町中に連れてきてんだよ!」 「安全管理は万全だとかで、町の役人を黙らせたらしい!」 「やべぇな……獲物なんか持ってきてねぇぞ!」 シャンティは、休暇中に、それも祭りの最中を、無粋なものをぶら下げたまま歩くのもいただけないと、愛用の大剣を指令室に置いてきていた。 視認できる魔物は三体。 そこまで脅威となる個体はいないようだが、いくら何でも素手で戦える相手ではない。 シャンティは周囲をくまなく見渡して、武器にできそうなものを急いで探す。 「いやぁあああああああああ!」 しかし、それも間に合わず、魔物の一体が観光客に今まさに襲い掛かろうとしていた。 「ちっくしょう!」 その身一つで飛び込み、魔物に体当たりをかましたシャンティ。 「こっちだ雑魚共!アタシが全員ぶちのめしてやるよぉおお!」 魔物たちの目の前で手を広げ、あえて注目を集めるように大声を上げた。 「ありゃ自警団の……シャンティちゃんじゃねぇか?」 「あぁ、間違いねぇ!でも、武器も持たずにいくらなんでも無茶だぜ!」 「他の自警団の連中は何をやっている!?」 その光景を目にした人々が口々に騒ぐ。 (団員はみんな別任務中で、駆けつけるまでにまだかかる!でも、手を借りようにも祭りの警備は雇われの素人ども……へへ……アタシがやるしかねぇじゃねぇか!) 眼前に立ちふさがるシャンティを前に、三体の魔物達は一斉に襲い掛かる。 鋭い爪や牙から繰り出される攻撃をギリギリのところでかわしながら、攻撃を加えていく。 しかし、いくら彼女が戦闘慣れしているとはいえ、素手での打撃が魔物に対して効果があるとはいえなかった。 「くそっ!」 次第に疲れが出始める。 それに相反してますます殺気立つ魔物達。 このままでは結果は目に見えていた。 「あ……あんな子が一人で戦ってるんだ!俺たちだって!」 「そ、そうだ!皆で戦えば!」 戦況を見かねた観衆の中からそんな声が聞こえ始める。 「素人が手を出すんじゃねぇ!さっさと逃げりゃいいんだよっ!」 シャンティはすかさずそれを怒声で制止する。 が、そんな周りに気を取られたほんの一瞬の隙が、攻撃をかわす判断を一瞬遅らせた。 「うっ……!」 華奢な身体に強烈な爪の斬撃を受けたシャンティは、軽々と打ち上げられ、追撃の体当たりを食らう。 「ぐ……いってぇ……さすがにやべぇなこりゃ……」 もはや立ち上がるのがやっとに見える。 シャンティ自身も自分の限界を感じ始めていた。 「お嬢ちゃん!これ使いなっ!!」 絶体絶命の窮地の中、耳に入った聞き覚えのあるその声に反応するシャンティ。 声の主は何かを彼女の頭上に投げ入れる。 「ありがてぇぜ!『お姉さん』!!」 声の主はシャンティの服を見繕った露天商の女主人だった。 跳び上がり、しっかりと受け取めたシャンティは、それを強く握り締める。 「おぉ!こりゃぁ……!」 「クソ鍛冶師の旦那が仕上げた奇跡の一品さね!とっとと片付けちまいなっ!」 受け取ったのは身の丈ほどの大剣。 愛用の剣に近いそれを、軽く素振りをして感触を確かめる。 自分の剣よりも少し細身だが、その分軽くて振りやすく、手にも良く馴染む。 「こんなもんまで扱ってんのかよ!まったくなんて物騒な服屋……でも、いい仕事だっ!」 獲物を手にしたシャンティを前に、魔物達は警戒を強め、その様子を鋭く観察する。 「よぉ……よくも好き放題やってくれたなぁ……ぶちのめしてやるよぉおおおおおおおおお!」 鬼神の如し暴れっぷりだった。 瞬時に間合いを詰めて先頭の魔物の首を刎ね落とす。 反射的に後ろに跳んだ残り二頭のうち、一頭の首元をすかさず掴み、そのまま撫で斬り。 残された最後一頭は恐怖に駆られたのか、その場から逃げ出そうとする。 そこへすかさず追撃するように放たれた斬撃。 シャンティの一振りが生んだ風圧に風の魔力を纏わせ、必殺の一撃となったそれは、意図も容易く魔物を両断した。 瞬く間に三頭の魔物を討伐し、剣についた血を掃い、そのままそれを肩にトンッと背負う。 彼女は、観衆の呆気に取られた様子に気が付くと。 「もう大丈夫だぜ!気合入れて祭りを盛り上げてくれよなっ!」 向けられた笑顔でのブイサインを見た途端、声を失っていた観衆達が今日一番の歓声を上げた。 「「おぉおおおおおおおおおお!!」」 「よくやったなお嬢ちゃん!今日の祭りは今までで最高の祭りになるぜ!」 「助けてくれてありがとうございました!この恩は決して忘れません!本当にありがとう!」 褒められることに不慣れなシャンティにとって、方々からかけられる感謝の言葉はとてもくすぐったく、照れくさく感じられた。 「お、おぅ……へへ……へへへ……」 (ここはいいところだぜ。アタシだって認めてもらえたんだ。親父たちもいつかきっと認めてもらえるような、そんな世界にアタシが変えてやるんだ……!) 喜びに沸く広場。 皆が酒をあおり、踊り狂う熱狂の中、そこから一つだけ逃げるように去っていく人影をシャンティは見逃さなかった。 「おっと、最後の仕事が残ってたみたいだな……」 「よぉ……もうお帰りか?祭りは満喫できたかよ?」 背後からのシャンティの声に、ビクッと肩を鳴らして立ち止まる人影。 「てめぇだな?魔物をわざと逃がしやがったのは」 人影の正体は見世物屋の店主。 「な、なんのことかね?」 「おいおい……この状況でアタシを前に、言い逃れできるつもりでいるんなら舐めてくれたもんだよなぁ?」 ドンッと剣を地面に突き立て、殺気を含んだ睨みを利かせる。 「檻は壊れてなかった。どう考えても変だろ?誰かが鍵を外さねぇとあんなことにはならねぇ」 「……わ、わかった!全部話す!だから命だけは助けてくれ!!」 あの戦闘を目撃してからでは無理もない。 下手な真似をすれば、命を取られると理解した男は、饒舌に語りだす。 わざと魔物を解き放ち、事件を起こしたこと。 目的は、祭りをめちゃくちゃにすることで自警団の信用を失墜させることにあったこと。 自警団がなくなれば、遺跡荒らしの障害は減り、仕事がずっと楽になるという事。 「で、誰に雇われたんだ、てめぇ?」 「南に新しくできた盗賊団だ!その頭領とは古い付き合いで、いい話があると持ち掛けられて……」 「なるほどなぁ……掟もルールも知らねぇクズ共が……!」 「全部しゃべったんだ!み、見逃してはくれないか……?金が欲しいならそれもくれてやる!だから、な!?」 「お?そっかそっか……安心したぜ!」 「あ……あぁ!任せてくれ!金庫番にも顔が利くからな!いくらでも用意してやれるぞ!」 「いやぁ……てめぇが、脅されたり、騙されたりしてこんなことしたんだったらどうしようかと思ったけどよぉ……思った通りのクズなおかげで、躊躇なくぶっ飛ばせるぜ!」 「ひ……!」 「その薄汚ぇ性根、叩き直してやるよぉ!!」 その後、気を失った犯人を警備兵へと引き渡したシャンティ。 「前のアタシだったらマジでぶっ殺してたな……丸くなったもんだぜ……はぁ……」 落ち込んだ様子で広場へと戻る彼女。 その足取りはとても重かった。 せっかく用意した服は戦闘でボロボロ。 整えたはずの髪もボサボサ。 「……へへ……こんな格好じゃあシャフールさんに会いになんて行けねぇな」 祭りには戻らずに、そのまま裏道を抜けて町はずれまでやってきたシャンティ。 何気なく外壁の上によじ登り、一人、黄昏た表情を浮かべる。 「やっぱ性に合ってなかったんだよ……まぁ、祭りは無事だったんだし、よかったよかった……」 自然と涙が込み上げてくる。 いろんな感情が押し寄せ、彼女の心を絞め付ける。 「……シャンティ」 そんなシャンティの不意を突くように足元から名前を呼ばれた。 慌てて目に浮かんだ涙をぬぐい、壁の下を見下ろす。 「シャ、シャフールさん……何でここに……?」 「……待ち合わせ場所に姿がなかった」 「あ、あぁああ!アタシ、何も言わずに約束破っちゃって!」 「……構わない」 そう言うと、シャフールも壁の上まで飛び上り、シャンティの隣に腰を掛けた。 「え!?シャフールさん!?」 (うわっ!?なんだ、なんだ!?な、何か話さないと!ごめんなさい?お疲れ様でした?あぁあああああ!わかんねぇ!わかんねぇよもう!!) 「……話は聞いた。頑張ったな」 シャフールから静かに、そして優しくかけられた声。 シャンティの心を絞め付けていた縄がそっと解けていく。 「……はい……頑張りました」 「……綺麗な星空だ」 「……はい……とっても綺麗です」 暖かな何かに心を包まれながら、そっと見上げた星空。 星は滲んでよく見えなかったが、きっと今まで見たどんな空よりも美しく輝いていたことだろう。 +血を欲す魔剣少女エレノア 切り立った断崖の海岸線。 分厚く黒みがかった雲が空を覆い、鳥は低空を飛んでいる。 海は荒れ、波がネズミ返しのようになった断崖に激しく打ち付けていた。 試練を課せられた一人の少女を送り出すには、最悪な天候になるだろう。 その少女が、エレノアでなければの話だが。 『終端の岬』にある城を背に、エレノアは歩を進めていた。 遂に、自分の使命を成し遂げられる日が来るのだ。 王の為に、この命を捧げる事ができる。 この日をどれだけ待ち望んだか……。 魔物の魂を集め始めてから10年は経っている。 この血を汚す……それは王の完全な復活に必要不可欠なもの。 この世で唯一絶対の王を……。 最強の王を……。 愛している方を……。 魔剣を見つめながら想いを馳せる。 自然と笑みが溢れてくる。 「こんなに素敵な事があって……良いのでしょうか……」 ポツリと呟くと、魔剣に一滴の雫がついた。 ついに降りだした雨は、除々に勢いをつけながらその音を大きくしていく。 髪も服も濡れていくが、エレノアは足を止める事はない。 寧ろ、その足取りは軽くなっているようだった。 「天もこの日を待ち望んでいたようね……フフフ……アハハ……」 笑いが止まらない。 こんなに楽しい事が世界にあっていいのだろうか? そんな疑問すら湧く程の幸福感。 あの城に生まれ、あの王の元に育ち、今まで生きてきた事。 こんなに素晴らしい人生を送れる人など、この世には自分だけだろう。 王の為に、自分の力を全て出し切る。 足が勝手に動き出し、いつの間にか走っていた。 今日、王を復活させる為の器となる。 雨は更に強くなり、嵐となる。 風が吹き荒れて、打ち付ける波は更にその力を増す。 そして、遠くに翼を広げた翼竜の影がエレノアの目に入った。 「あいつらね……ウェルミス……会いたかった……!!」 絶対に見失わないように目を見開き、雨が目に入ろうと構うことなく全速力でその影に向かう。 そこはウェルミスの巣。 大陸に数種確認はされているが巣を知っている者は少ない。 翼を広げ、仲間に合図でも送っているのだろうか、耳につく鳴き声を上げている。 「さぁ……楽しもうね……!!!」 エレノアは視界の中央にウェルミスを置いたまま、魔剣を投げつける。 魔剣は宙を舞いながら、ウェルミスを捕えた。 しかし、一撃では傷つける事すら出来ていないようだ。 エレノアの殺気を感じ取ったウェルミスは、咆哮をしてから急降下をして襲いかかってくる。 「くっ……!!」 間一髪、横に飛んで直撃はしなかったものの、左腕に痛みを感じる。 二の腕に爪が当たったのか、三本の引っかき傷で服は裂け血が滲んでいる。 それを見たエレノアはまた目の色を変える。 「よくも……よくも……王に貰った大事な服を!!!!!」 濡れた髪の奥で目を見開き、ウェルミスに怒りをぶつけた。 魔剣に魔力を送ると、魔剣の紋章が赤く光る。 そしてウェルミスに向けて飛んでいった魔剣は、ひとつ前の攻撃とは比べ物にならない程の威力を持ち、その翼を貫通した。 「ギィイイイ!!!」 叫びながら落ちていくウェルミスに、更に魔剣を操って追撃をいれる。 何度も何度も宙に浮いては地に落ちたウェルミスを叩きつける魔剣。 「ほらっ!?楽しいでしょう!!?」 最後のトドメとばかりに魔剣を振り下ろす。 ウェルミスは抵抗せず、魔剣が突き刺さった。 既に絶命しているようだ。 魔剣はウェルミスの血を吸い上げて赤く光り、その魂を集める。 「王の為にその命を使うのだから、あなたも幸せでしょう?」 エレノアはその様子を見ながら笑っている。 次の瞬間、後方から殺気を感じて前に飛び出した。 振り返ると、羽を広げる翼竜の影が3つ。 そしてその奥に、見たこともない大きさの翼竜が見える。 「フフフ……いいわ……まとめて相手してあげる……!!」 迷う事なく、エレノアはウェルミスの群れに突っ込んでいく。 勝算など考えてもいない。 ただ、目の前の敵を殺す……その事だけに集中していた。 「全員……まとめて殺してあげる!!!!!」 狂気に満ちたその目を作るのは、王への愛情。 鼓動が高まる。 エレノアに呼応するように、魔剣は宙を舞う。 1体……2体…… ウェルミスの猛撃を耐えながら魔剣を振り回す。 今まで、どんな敵にも負けてこなかった。 それこそが、王への愛の証明。 この戦いに勝利すれば、その全てが報われる。 王は自分を受け入れて、完全な復活を遂げるのだ。 地上で誰にも負ける事のない力を手に入れ、この世に君臨する。 そんな夢のような光景を作る事に貢献する……。 誰にも出来ない……自分だけにそれが出来る……。 だから…………。 「貴様等……命を差し出せ……!!!!」 エレノアはその場に倒れこむ。 体中傷だらけになり、服は血だらけになっている。 殆どの魔力を使い果たし、魔剣を操る事もできない。 巨大な翼竜に挑むも、その強大な力には及ばなかった。 しかし、エレノアは何故自分が動けないのか分からない。 今までに経験した事のない状況の中、ぼんやりと敵を見つめていた。 「なんで……立てないの……??」 額から出た血が入り霞んでいるが、目は見える。 口を動かす事は出来ないが、喉から声も出る。 それなのに、身体を動かす事が出来ない……戦えない……。 王の……復活が……できない…………。 翼竜は咆哮すると、空に舞い、嵐に負けず羽ばたく。 空が一瞬光ったかと思うと、雷鳴が轟いた。 翼竜は口元に光を放ちながら何かを溜めている。 それを見届ければ、エレノアは死ぬだろう。 しかし、もはや指一本動かす事が出来ない。 開いたままの目から、涙が溢れてくる。 「王よ…………申し訳…………ございま…………」 「エレノアァアアア!!!!」 王の声が聞こえた気がした。 それは、幼い頃の記憶を呼び起こしたものだったのだろうか。 はたまた、自分が作り出した幻聴なのか。 なんであれ、最後の最後に王の声が聞こえた事に嬉しくなった。 響く轟音。 大地が揺れる。 これが死の直前なのかと、エレノアは考える。 しかし目に飛び込んできたのは、黒いオーラに包まれた深紅の矢だった。 王の側近である、ダズールから聞いた事があった。 王の絶対的なヴァンパイアの力。 血を凝縮して放たれる矢は、全てを貫く。 その言葉の通り、翼竜の身体を貫き地面に突き刺さった矢は、闇のオーラを放出させている。 「やはり……王は……最強の……」 「王!!」 飛び起きると、そこは見慣れた城の自室だった。 ベッドで上半身を起こしている自分……。 外から差し込んだ朝日は、部屋の中に窓の形を作り出す。 いつもの朝だった。 ベッドから降りようと身体を捻ると痛みを感じた。 足には無数の傷がついている。 つまり、ウェルミスとの戦いは夢ではない。 私は、あの後、どうなったの? どうやってここに戻ってきたの……? 魔剣は……? ベッドの横に立て掛けられた魔剣。 しかし、何か違和感がある。 毎日手入れを欠かさない魔剣。 汚れているのは、あの戦いの後だからかもしれない。 それでも、こんな角度で立てかけた事は今まで一度もない。 「私以外の誰かが魔剣をここに運んだの……?」 魔剣を手に取り、思考を走らせる。 その時、ほのかに匂いを感じた。 これは……血の匂い……? 魔剣にウェルミスの血がついているのかと思ったが、これは魔物の血の匂いではない。 自分の服に血がついているのではないかと見てみるが、それも違うようだ。 段々頭がハッキリしてくる。 結局あの後の事は分からない……。 ダズ爺ならば、何か知っている筈……。 痛みはもうない。 正確にはあるのかもしれないが、エレノアにそれを認知する事はできなかった。 自室を出て、廊下を見渡す。 いつもと変わらない城の景色。 「ダズ爺?どこ?」 声を上げてみるが、ダズールの返事はない。 城の中を探す事にする。 「ダズ爺?ここ?」 ダズールの私室、調理場、書庫、倉庫……。 次々と城の中のドアを開けて行くが、ダズールの姿はない。 ダズールがこの時間に城を出る事はない。 どこに行ったのだろうか……。 あとは、王のいる玉座を残すのみとなった。 玉座には王もいるだろう。 王ならば何か知っているかもしれない。 エレノアは決心し、普段は決して入る事のない玉座へと向かう。 「王よ……謁見をお許し頂けませんでしょうか……」 扉の前で緊張しながら王の返事を待つ。 しかし、求めた返事は返って来ない。 「王……ご不在なのでしょうか……」 この扉を開けてもいいのだろうか。 まだ幼かった頃は、王がどれほど尊い存在なのかも分からずに、この扉を開いては王に会いにいっていた。 しかし、それがどれほど愚かな行為だったか……今考えると顔から火が出そうになる。 それでも、今の状況を解決出来るならと、意を決して扉に手を掛けた。 「勝手ながら……失礼します……」 ギィという音を立てて視界に玉座が広がる。 王の姿はない。 「王……どちらに……王……!!」 中に入り、辺りを見渡す。 ふと、燭台にあるロウソクが今にも燃え尽きようとしているのが目に入った。 この大きさのロウソクならば一晩は持つだろう。 つまり、前日の夜には玉座に王がいたという事だ。 もしどこかに行ってしまったとしても、まだそう遠くには……。 エレノアは振り返り、走りだそうとする。 何か、この城に嫌な空気が流れているような感じがする。 王は……王はどこに……。 「エレノア。何をしている?」 走りだそうと前傾姿勢になり一歩踏み出した所で、開けっぱなしだった扉の奥に王の姿がある。 ドキっとして、とっさに立ち止まるエレノア。 目の前に、王がいらっしゃる……。 何から話せばいいの? 「えっと…その……ダズ爺……を探しているのですが……見当たらなくて……玉座に来ているかと考えまして……」 まずは勝手に玉座に入った理由を話す。 王の怒りを買う訳にはいかない。 ディヴァイルベルトは少し考えたような表情をした後、一言口にする。 「丁度良い。私からも話があるのだ」 ディヴァイルベルトはゆっくりと玉座に入り、扉を閉めるとエレノアの横を通りすぎて椅子へと腰を降ろした。 エレノアはスカートの裾を広げて王の前に膝をつく。 「なんなりとお申し付けください」 「いや、命令などではない。少し話をしたいと思ってな」 今まで、王からエレノアに話をしたいなどと言う事はなかった。 故に、エレノアは震える。 その言葉だけで感動をしていた。 王が、自分に言葉をくれる。 それは……どれほど幸せな事だろう。 しかし、ハッと気が付いて溢れる幸福感を押しつぶす。 私はウェルミスの討伐に失敗しているのだとしたら、王はお怒りになっているかもしれない。 このタイミングでの話というのは、むしろその可能性の方が高いだろう。 手に汗が滲む。 王は落ち着いたトーンで一つの質問をぶつける。 「どうだ?身体は大丈夫か?」 質問の真意がわからない。 エレノアはただ聞かれたままの答えを出すしかなかった。 「はい……。この通り、すぐにでも魔物の魂を集めにいけます」 「そ、そうか……。それは良かったな」 「良かった……?」 つまり、王は自分を心配している。 やはり、確かめなくてはならない。 「王……一つ私からもお聞きしても宜しいでしょうか」 「なんだ?」 ゴクリと喉を鳴らす。 エレノアの全身に緊張が走っていた。 「私は……ウェルミスの討伐に失敗したのでしょうか?」 「そうだな……。エレノアには随分と無理をさせたようだ。すまなかった」 エレノアは即座に頭を床にこすりつける。 「とんでもございません!!私が至らない故に、王にご心配をかけただけでなく任務も失敗し、王のご計画に多大なご迷惑をかけてしまいました!!!」 出せる限りの声を出した。 涙が溢れる。 私は王を失望させてしまった。 私は……。 私は…………。 「いや、いいのだ…!いいのだ……!エレノア……!」 王は手の平をエレノアに向けて少し焦っている。 しかし、床から額を離そうとしないエレノアに王の様子は見えていない。 「申し訳ございません!!不甲斐ないばかりに……!!!」 泣きわめくエレノア。 ディヴァイルベルトは、小さくため息を吐いた。 「エレノアよ。顔をあげろ。お前に相談があるのだ」 その言葉を聞いて、額を床につけたまま目を開いた。 王からの相談……。 嫌な予感しかしない……。 「エレノア……。魔剣を置き、普通の生活をする気はないか?」 エレノアは地が崩れ落ちるような感覚に見舞われる。 王は……自分を見捨てようとしている……。 「なぜですか……!?私がウェルミスの討伐に失敗したからでしょうか!?教えてください!もしそうであれば、すぐに力をつけて、必ずや魂を持ってきますので……!!!!」 顔を上げ、すがるように王に懇願する。 ディヴァイルベルトは首を振る。 「いや、そ、そういう事ではないのだ……。先も言ったように、エレノアに負荷をかけすぎたのは私の方だ。誤解するな……」 「ならば!!何故魔剣を置けなどと言うのですか!?私には話が見えません!!ダズ爺はどこに行ったのですか!?いなくなった事と何か関係があるのでしょうか!?お願いします!教えて頂けませんでしょうか!」 「…………。」 ディヴァイルベルトは何も答えない。 ただ、落ち着きがないように見える。 「王……!!お答えください!!」 「う、うううるさい!!ダズールは今朝城を出て行った!何も知らん!」 王の様子が何かおかしい。 こんな王は今まで見たことがない。 「王……どうなされたのですか……?すごい汗をかいていらっしゃいますが……どこかお体が悪いのですか……?」 心配するエレノアを余所に、咳払いをするディヴァイルベルト。 「ゴホン!ゴホン!!大丈夫だ……!あ、いや、少し風邪気味かもしれんな……いや、今はそんな話はどうでもいいのだ!!私はエレノアに魔剣を置かないかと話しているのだぞ!!私の話を逸らすでない!」 「申し訳ございません。ですが……あっ…………」 ウェルミスの討伐の失敗。 魔剣を置かないかという打診。 ダズールの失踪。 今の王の態度。 全てが繋がった一つの仮説。 全てに説明がつく仮説は、仮説では留める事ができない。 王は真実を話していない。 私はウェルミスの討伐に失敗した。 王の完全な復活の為に必要な器となる事ができなかった。 私に失望した王が、他の方法を探すのは当たり前だ。 ダズ爺から聞いたことがあった。 王の復活には人間の邪悪な血が不可欠。 だから私は魔剣に血を集め、この身体に魂を集め続けた。 その私が使いものにならないと考えたなら……必要な物は……。 新しい器―― ダズ爺は朝出かけたと話している。 つまり、新しい人間を探しに行ったのだろう。 王の使者として、王の完全な復活を願うならば、早くから行動する事も納得がいく。 私に魔剣を置けと言うのは、次の人間に魔剣を持たせる為。 それを私に教えない為に、王は嘘をついている。 いや……王に嘘をつかせているのは………私だ。 泣いている場合ではない。 文句を言っている場合ではない。 今出来る事を、やらなければならない。 他でもない、最愛の王の為に。 エレノアは笑顔を作った。 「ご安心ください」 ディヴァイルベルトは嬉しそうにしながらエレノアを見る。 「何っ!?魔剣を置いてくれるのだな!?」 「いいえ、ダズールを探しに旅へ出ます。そして王にご満足頂けるように、より多くの魂を集めてきます。新しい器など必要ない事を証明してみせます!私が必ずや、王の完全な復活を成し遂げて見せます!」 満面の笑みを浮かべるエレノア。 王を心配させる訳にはいかない。 自分が必ず成し遂げる。 王に安心してもらえるように。 「えっ……?ちょっと待てエレノア……今ダズールがなんだって?お前……何か勘違いを……」 エレノアは背を向けて魔剣を背負い玉座を後にする。 「待てエレノア!新しい器とは何の話をしているのだ!!待つのだエレノア……エレノア……!!!」 王をこれ以上お待たせする事はできない。 ならば一刻も早く、この身体に流れる血を汚さなければ……。 魂を集め……そして王の生け贄となる。 今までずっと待ち続けたこの大義を失う訳にはいかない。 もはや、ディヴァイルベルトの声はエレノアの耳には届いていなかった。 ディヴァイルベルトは一人玉座で頭を抱える。 これ以上何を言っても、エレノアを止める手立てはないだろう。 「エレノア……私はどうすれば良いのだ……」 古城を吹き抜ける海風は、いつになく暖かい。 断崖の岩陰に揺れる赤い蕾は、そっと花を開こうとしていた。 ――数日後 コレーズ村を抜けて、商業都市イエルへとやってきたエレノアは目を丸くしていた。 活気溢れる人々、目の回る様な規模の街並み。 生まれてから、ダズールとディヴァイルベルト以外の人と接した事はなかった為、新しい世界に飛んできたような感覚を覚える。 これだけの人がいるならばダズールもこの街にいるに違いない。 何の当てもなく歩いていると、後から声を掛けられた。 「お嬢さん!そこのごっつい大剣背負ったお嬢さんだよ!」 振り向くと、大柄の男が手を振っていた。 「私?」 顔に指をさすと、ウンウンと頷く男。 「珍しい剣だなって思ってよ!ここら辺じゃ見ない代物だ。イオの鍛冶屋に仕立ててもらったのか?」 近付いてきたかと思うと、大剣をまじまじと見つめる男。 「これは王に頂いたものよ」 笑顔で魔剣を抱きしめるようにするエレノア。 男は不思議そうな顔をしている。 「王?王ってのは……どこぞの王だ……?まぁいいや、もう少し見せ……」 男は魔剣に手を伸ばすのをエレノアは見過ごさなかった。 「触るな!!!!」 周囲の人々は時間が止まったようにエレノアに視線を向けた。 男は驚き、三歩ほど後退る。 エレノアは殺すように男を睨みつけて、歯をギリギリと鳴らす。 「悪かった!ごめんごめん!大切な剣なんだな!悪気はなかったんだ!許してくれよ!」 エレノアは表情を緩める。 「分かったならいいの。二度と触ろうとしない事ね」 その笑顔を見て、周りの人々の時間が動き出した。 男はホッとした様子で緊張を解く。 「よっぽど大事な代物なんだな。傭兵かなんかか?」 「傭兵?違うわ。私は王の復活の為の器なの」 「器?なんか不思議なお嬢さんだな……はっはっは」 楽しそうに笑う男だったが、次の質問でその表情は氷付く。 「私は魂を集めたいのだけど、どこかいい場所を知らない?」 「た、魂!?なんだ……恐ろしいお嬢さんだな……」 「そう、魔物の魂。教えてくれないかしら?」 真剣な表情のエレノアを見て、どうやら脅かしている雰囲気ではないと考える男。 まだ歳は16、7に見える少女が抱えているものが何かは分からないが、あまり関わらない方が良さそうだ。 「ま、魔物の情報なら、酒場に行けば傭兵向けの仕事を紹介して貰えるぞ。魔物関連の仕事も見つかると思うぞ……」 「サカバ?っていうのはどこにあるの?」 「あんた、酒場も知らないのか?えっと、ほら、あそこにビールの看板が見えるか?」 「ビール?」 「おいおい……まじか……」 男は頭を掻きながら、彼女がよほどの田舎から来ているのだと考える。 それならば多少おかしな発言にも納得が出来た。 「わかった。これも何かの縁だ。連れてってやるよ。こう見えて、俺も傭兵の端くれだからな!」 男はエレノアを酒場まで連れていく。 酒場には壁一面に張り紙がしてあり、そこに様々な依頼が書かれていた。 「ほら、こん中から好きな依頼を選べ。文字は読めるか?」 魔物を狩る事だけを教えられていたエレノアは、簡単な数字などは分かるが、それ以上の事はわからない。 「魔物の依頼はどれ?」 男は仕方ないかという顔をしながら、依頼書を見繕う。 「これと、これと……これは無理だな……」 男が視線を外した依頼書に、エレノアは食いつく。 「何が無理なの?」 「そりゃ……あんたがどれだけ強いか分からないが、近くにある魔物の巣を取っ払って欲しいって依頼だ。数は1匹や2匹じゃねぇのさ。傭兵団がチームを組んでやるような……おい!ちょっと待て待て待て!」 笑顔でその依頼書を壁から剥がして手に取るエレノア。 そのまま酒場の奥へ歩いていく。 男は肩を掴んで止めようとするが、エレノアが振り向いた事で背負っている魔剣が目の前に現れ、慌てて手を引いた。 「あぁ……もう仕方ねぇな……」 頭をガリガリと掻いた後、エレノアを追いかける。 酒場の奥のカウンターにいる女性に依頼書を渡す。 「この魔物の魂を頂きたいの。場所を教えて貰えないかしら?」 「魂……?まぁいいわ……えーと、えっ!?この依頼?申し訳ないけど、こういう危険な依頼は単独での受注は出来ない規則になってるの。それに、地理も分からないような人には無理よ。悪いね」 エレノアは振り返り、追いついた男に話しかける。 「地理ならこの人が詳しいわ。私達はチームなの。それならいいでしょう?」 「えっ!?ちょっと待て!お前、俺もいくのか……!?」 カウンター越しの女性は、エレノアの後ろの男を見ると穏やかな表情になる。 「あぁ、なんだヤンギの仲間だったの?見ない顔だと思ったけど、それなら納得。ヤンギ、人は集まってるの?大丈夫なのね?」 ヤンギというのはどうやらこの男の名らしい。 「えっと……俺はそんな……」 どもるヤンギにエレノアが割って入る。 「大丈夫よ。なんの問題もないわ」 「おーい!ちょっと手が足りねぇんだ来てくれ!」 厨房の方から男の声が聞こえてきた。 カウンターの女性は依頼書を手に奥に歩いて行く。 「それじゃあ登録しておくから。ヤンギ、準備は念入りにね」 背中越しに手を振りながら、女性は歩いていった。 「なぁ、お嬢さん本気なのか?こんなヤマなかなか……」 心配そうなヤンギに、笑顔で返すエレノア。 「あなたは来なくても大丈夫よ。私一人で行くから。助かったわ。場所だけ教えてくれる?」 「待てって……お嬢さんがどれだけ強いかは知らんが、一人じゃ絶対無理だ。どうしても行くってんなら、俺と、俺の仲間も同行させろ。このまま死なれたら寝覚めが悪ぃ……。出発はいつにする?」 「私は今から行くつもりよ」 「待て!待てって!何がなんでも夜はだめだ!視界が悪いし、良い事が一つもねぇ……」 「闇の力が沸いてくるのに……」 「駄目だ駄目だ!2日後の朝にしよう!俺の仲間もしっかり集めさせて貰う!それまで絶対場所は教えない!」 エレノアは残念そうな顔をするが、仕方ないとため息を吐く。 「それでいいわ……」 ――2日後 エレノアのいる宿に入り、階段を登る。 これから始まる大仕事。 緊張しながらドアをノックした。 「エレノア。起きてるか?そろそろ行くぞ」 ドアが開いたと思えば、笑顔で魔剣を抱えるエレノアが目に飛び込む。 無一文だったこのお嬢さんの宿代も出してやった。 ここまでしてやる恩義もないのだが、何か放っておけない自分が嫌になる。 イエルの街からカルム方面に口を開ける東門には、既に何人かの傭兵が集まっていた。 皆武器を持ち、鎧を着こみ、まさしく傭兵と言う集団。 「皆、遅くなった。このお嬢さんが話をしたエレノアだ。よろしくしてやってくれ」 エレノアに視線が集まる。 「本当にただのお嬢ちゃんに見えるが……大丈夫なのか?」 「おいヤンギ!お前の頼みっつーから来てやったが、俺はこんな女の為に働くのか!?」 ヤンギは笑顔でその声に答える。 「まぁまぁ……みんな言いたい事はあるだろうけど、ここは一つ俺の顔を立ててくれよ……なっ!エレノアの取り分は当面の生活費だけでいいらしい。あとの報酬は俺達の山分けだ。当分は遊んで暮らせるな!はっはっは!」 その話を聞いて顔を明るくする者はその場にいない。 皆、報酬の額と依頼内容の難しさは比例する事を知っている。 魔物の巣の大掃除。 全員が生きて帰れる保証なんてない。 「みなさん、よろしくお願いします」 素直に頭を下げるエレノア。 命を賭けて手伝ってくれる仲間には丁寧に接してくれと言った事を守っているようだった。 抜けている所はあるが、しっかりと話せば良い奴なのかもしれない。 「ちっ……くれぐれも俺達の邪魔にならねぇようにな」 傭兵の男達は立ち上がる。 「それじゃあ、出発といこうか。場所はカルムに向かう道中の北、山岳地帯だ」 昼過ぎ。 一行は山の麓(ふもと)で作戦を立てていた。 目的地である『魔物の巣』とされる洞窟の中が、どの程度の広さなのかは分からない。 基本陣形、緊急事態の対処方などの確認が行われている。 そんな中、エレノアは魔物の気配を感じ取りウズウズしていた。 王の為、出来るだけ多く魂を集める。 そして、一日でも早く王の完全なる復活を……。 「よし、それじゃあ行くか!!みんな頼んだぞ!!」 ヤンギは剣を掲げて士気をあげる。 道中では文句ばかりだった男も、この瞬間には戦士の表情になっていた。 そして、一行は洞窟の中へと足を踏み入れる。 「くっそぉお!!どんだけいやがるんだ!!」 洞窟の中は魔物の巣と言われるだけあり、おびただしい数の魔物が巣食っている。 少しずつ進んではいるものの、足場は悪く、タイマツの灯りで得ている視界も広くはない。 闇の中から次々と出てくる魔物に苦戦していた。 「おい!なんだあれ!?」 傭兵の一人が声を上げた。 男が指す方向を見ると、暗闇の中に赤い光が浮かぶ。 巨大な四足獣の瞳だと認識出来た時、タイマツを持っていた術士が吹き飛ばされる。 「うわぁああああ!!!」 「おい!大丈夫か!?どうした!?」 一瞬で全てが闇に包まれる。 「ぐぁあああああ!!!」 術士の叫び声が洞窟の中に響き渡る。 この闇の中では、何が起こっているのか分からない。 ヤンギは声を上げる。 「退却だ!一旦引くぞ!!退却だ!!」 「わかった!俺が道を作る!」 弓を持った男が魔力で灯した火矢を次々と壁に放ち視界を確保した。 一行は急いで洞窟の出口に向かう。 何人かは付いて来ていないかもしれない。 それでも、これ以上戦い続ける事は死を意味していた。 ヤンギの目に光が入る。 洞窟の出口だ。 「みんなもう少しだ!!」 洞窟の外に走り抜ける。 ゼェゼェと息を切らしながら、周りを確かめる。 「みんないるか!?」 傷ついた術士を抱えたヤンギは、周りを確認する。 1、2、3、4、5………。 「おい、あの女がいねぇぞ!」 一人の傭兵が叫ぶ。 ヤンギも辺りを確認するが、エレノアの姿がない。 「くそっ!」 「だから言ったんだ!あんな腕も分からねぇ女は足手まといだって俺は忠告した筈だぜ!?」 ヤンギは術士に薬草をかじらせながら考える。 (ここで見捨た方が……くそっ!そんなの寝覚めが悪ぃなんてもんじゃねぇぞ!) ヤンギは立ち上がる。 「新しいタイマツをくれ!俺は一人でも行く!無理強いはしねぇ!来る奴だけ付いてきてくれ!」 一同は息を飲む。 皆、少なからずヤンギに恩がある者ばかりだった。 仲間想いで、人柄のいいヤンギだからこそ、2日という短い期間でこれだけの戦力が集まっている。 そのヤンギが命を賭けて戦おうとしているのを前に、逃げ出そうとは思えない。 それこそ、戦士の恥だろう。 「ヤンギ、俺は行くぞ」 口に押し込められた薬草で意識を取り戻していた術士は、なんとか治癒魔法を自身に使用して起き上がってくる。 「俺もいく」 「ここに来て臆病風に吹かれるやつは傭兵じゃねぇよ」 次々に立ち上がる男達。 ヤンギはそれを見て、ニヤっと笑った。 「お前らホント最高だな」 新しいタイマツを持ち、洞窟の中に入っていく一同。 エレノアはまだ生きているだろうか。 もし息があったとして、助け出せる可能性は五分と五分という所だろう。 それでも、放っておく事はできない。 一同は慎重に進んでいくが、何か、様子がおかしい。 「なぁ、ヤンギ……俺達こんなに魔物倒したか……?」 足元に続く魔物の亡骸。 確かに先ほど戦った魔物達だったが、その数が多い。 そして不可解な事に、これだけの魔物が倒れているのに、血の匂いがしないのだ。 「どうなってやがる……」 驚くほど静まり返った洞窟の中を、少しずつ進んでいく。 洞窟の天井から水滴が落ちる音だけが響き渡る。 「おい……こいつは……」 目の前に現れたのは大きな四足獣の亡骸。 先ほどヤンギが退却の指示を出した場所だ。 無数の斬撃を受けたのだろうか、大きな斬り傷が至る所についていた。 しかし、そのどこからも血は出ていない。 「エレノアは……どこだ……?」 魔物の死体は更に奥の方まで続いている。 皆一様に息を呑み、最大限の注意を払いながら歩みを進めた。 「おい、この声……」 耳をすませると、遠くから女の笑い声が聞こえる。 「エレノア……なのか……??」 一行は歩幅を大きくしながら奥を目指す。 足元にはまだ魔物の死体が続いている。 これだけの魔物を、エレノアがたった一人で殺したとでもいうのだろうか。 誰しもがそう思っていたが、声には出せない。 そんな事が出来る人間ならば、王国直属の騎士にでもなれるだろう。 エレノアがそこまでの力を持っているなんて到底思えない。 しかし、状況を考えてみれば……それ以外に考えられ…… 「アハハハハハ!!!楽しいでしょう!?」 声はすぐ近く。 その角を曲がった所から聞こえる。 「みんな……行くぞ……!」 ヤンギの声に一同は頷く。 身体を前に出してタイマツを掲げる。 傭兵達は後に続き、各々の武器を構えた。 「エレ……ノア……!?」 目の前の光景を疑った。 空中を踊るように舞う大剣。 その下で楽しそうに剣を操るエレノア。 大剣は無数の魔物を的確に捉え、もの凄い勢いで殲滅していく。 それは、戦いではなく、虐殺と言った方が近いだろう。 「うわっ……うわぁ!!」 傭兵の一人が腰を抜かして尻もちをつく。 積み重なった魔物の死体から血を吸い出す魔剣を見れば、無理もないだろう。 倒れた魔物の傷口から出続ける血液は空中へ溢れ、魔剣へと引き寄せられていた。 ヴァンパイアの魔剣。 血を求め、奪った魂を使用者に宿す。 イエルで傭兵をやっていれば、酒場で一度くらいはこの噂を聞いたことがあるだろう。 誰もがただのお伽話……作り話だと思っていた。 この瞬間までは。 「ヴァ……ヴァンパイア……!!化物……」 その声に気がついたエレノアはゆっくりと振り返る。 「あら、あなた達、逃げたんじゃなかったの?」 その声を聞いて、その場にいた全員が身震いをする。 「なぁ……ヤンギ……あのお嬢さん……どうしちまったんだ?」 返り血を舐めながら、笑顔で近付いてくるエレノア。 「どうしたの?そんなに怖い顔して……」 ヤンギは厳しい視線を送り続けていた。 「お前は……ヴァンパイアなのか!?」 エレノアの表情が曇る。 「その物言いは何?あなた達、まさか王を敵視しているの?」 やはり……。 ヴァンパイアといえば人間を襲う存在。 ここ最近は聞かないが、数十年前には人間に被害を出し続けたという。 なんでも聖騎士がその命を犠牲に封印したとか……。 「お前……その剣は王に頂いたと言っていたな……?魂を集めるとはどういう事だ!?目的を話して貰おうか!!」 緊張が走る中、エレノアは楽しそうに話す。 「私は王の完全な復活に貢献したいだけよ?」 王の完全な復活……。 人々に甚大な被害を出したとされるヴァンパイア王を、この女が復活させようとしている。 「なるほどな……それでヤンギを騙したって訳か」 「騙した?人聞きが悪いわね……。私はただ……」 ヤンギは口を挟む。 「もういい。俺の責任だ。俺が止める!!」 タイマツを置き、剣を握る。 相手は女だと油断していられない。 一瞬でケリをつける……。 「お嬢さんに恨みはねぇが……見過ごす訳にはいかねぇな!!!」 言葉と同時に全力で踏み込んだ。 エレノアは笑顔に戻る。 「そう……それじゃあ…………」 「 全員……私が殺してあげる 」 数分後―― 洞窟の中には、エレノアの笑い声だけが響いていた。
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ドラゴンズレア キャラクター コメント 1983年にアーケードゲームとして発売されたレーザーディスクゲーム。 キャラクター ストライク:ダーク ミミロップorタブンネ:ダフネ姫 後者は名前ネタ。 ダークライ:モードロック 色違いボーマンダ:シンジ ジュカイン:リザードキング コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る ソードシールド バチンキー:ダーク マホイップ:ダフネ姫 ムゲンダイナ:モードロック -- (ユリス) 2019-11-24 19 43 42
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ZGMF-1000/A1 ルナマリア専用ガナーザクウォーリア 特徴 COST EXP SIZE HP EN 攻 防 機 移 宇 空 地 水上 水中 専用機 600 M 12620 158 27 23 23 7 B - B - C 武装 名前 威力 EN MP 射程 属性 命中 CRI 備考 ビームトマホーク 3800 16 0 1~1 BEAM格闘 95 7 ハンドグレネード 3000 24 0 2~3 射撃 50 5 オルトロス長距離ビーム砲 5000 24 0 5~7 射撃BEAM2 70 10 アビリティ 名前 効果 備考 アンチ・ビーム・シールド防御可能 シールド防御可能防御時にBEAM攻撃を軽減 支援防御可能 支援防御可能 設計元 設計元A 設計元B 設計不可能 開発先 開発先A 開発先B 2 ゲイツR 3 ザクファントム 備考 真紅のカラーリングが特徴のガナーウィザード装備ザクウォーリア。 高威力・長射程のオルトロスが魅力的だが、燃費はお世辞にも良いとは言えない。 なにより射程4に穴があるのがネック。使いこなすにはそれ相応の愛が必要となるので、その辺りは注意。 運用する場合はルナマリアの射撃値を補ってやると良いだろう。
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「呪文はもうちょっと待たなくちゃね」とアレクシーは上を指さしながら言った。「ドレイクがいるわ」 "The spell will have to wait," said Alexi, pointing up. "Drakes." プロフェシー 【M TG Wiki】 名前
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英名:Drake-Baya レアリティ:C 絵師:相沢勝美 番号:BS18-055 収録:覇王編5弾-覇王大決戦 コスト:4 軽減:2 シンボル:赤 系統:機竜 種類:ブレイヴ 1-LV1:000 0-合体:+000 LV1:『このブレイヴの召喚時』 自分のトラッシュにある系統:「雄将」を持つスピリットカード1枚を手札に戻す。 合体条件:『コスト4以上』 合体時効果:無し フレーバー 頼む、僕の片腕のかわりになってくれ! 備考/性能 公式Q&A/ルール エピソード/キャラクター ここを編集 BS18-赤へ戻る
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総合 2005年中日ドラゴンズファインプレー集 http //www.youtube.com/watch?v=GyzvgOQjEbM? 2006中日ドラゴンズファインプレー集開幕~6/4 http //www.youtube.com/watch?v=frwjYTBnx5M? 2006中日ドラゴンズファインプレー集6/2~7/31 http //www.youtube.com/watch?v=aWYcwd9NIYE? 2006中日ドラゴンズファインプレー集8/1~9/10 http //www.youtube.com/watch?v=NNoNf5DfhGE? 2006中日ドラゴンズファインプレー集9/12~シリーズ http //www.youtube.com/watch?v=jlX9Vqab7RM? ドラゴンズ名プレー集 http //www.youtube.com/watch?v=4NtVjNbeJYw? 新ドラゴンズ名プレー集 http //www.youtube.com/watch?v=kXdxsCbOrxI? オレ流参上! http //www.youtube.com/watch?v=qJ6tvBRsa7o? 2006中日ドラゴンズ総括 http //www.youtube.com/watch?v=rZj_TAbrzYw? 燃えよドラゴンズ!2006 PV風味 http //www.youtube.com/watch?v=59I4vVZfp6U? ペナント制覇 中日感動の優勝記録 昭和57年(1982) http //www.youtube.com/watch?v=doyCUT98VpM? 2006.10.10 優勝祝勝会-1 http //www.youtube.com/watch?v=AhXAXhbmFeI? 2 http //www.youtube.com/watch?v=YslP3uuVATw? 3 http //www.youtube.com/watch?v=RF6MWWhULAg? 荒木&井端 Araki Ibata 荒木&井端PV 絆 http //www.youtube.com/watch?v=HcIcSewGRQU? 荒木&井端コンビプレー(打者新井) http //www.youtube.com/watch?v=OFNyqDMKwJE? 荒木&井端コンビプレー(打者宮本) http //www.youtube.com/watch?v=gMEYe6iI1ew? 荒木&井端コンビプレー(打者梵) http //www.youtube.com/watch?v=h95w8ADMXe8? プロ野球は死なず・史上最高の二遊間 1 http //www.youtube.com/watch?v=Fp5CGsNXYa4? 2 http //www.youtube.com/watch?v=jkhIaAJzUgw? 井端の単打で荒木が一塁から生還 http //www.youtube.com/watch?v=Gy_joniOcIg? アライバ珍プレー http //www.youtube.com/watch?v=2LhPXCXZ074? 井端 弘和 Hirokazu Ibata 井端ファインプレー+お手玉プレー http //www.youtube.com/watch?v=y7lbZH5DO1w? 2006日本シリーズ第一戦、ファインプレー http //www.youtube.com/watch?v=jkOTLTRCcbI? 英智 Hidenori 英智特集2004 http //www.youtube.com/watch?v=AyUDh2vS30k? 蔵本家の物語 http //www.youtube.com/watch?v=ObqtW1OCc0A? 英智4年ぶりHR&お立ち台 http //www.youtube.com/watch?v=4PLsbEKCNkI? 英智お立ち台3連発 http //www.youtube.com/watch?v=uOVpa262OD4? 岩瀬仁紀 Hitoki Iwase 岩瀬仁紀-真横に滑るスライダー http //www.youtube.com/watch?v=tkQoRZtZchs NR? 岩瀬仁紀-鋭いスライダー hitoki iwase http //www.youtube.com/watch?v=MzGTsVOF76w? 148km/h 最高のストレート vs清原 http //www.youtube.com/watch?v=CJCXwSAhdtM NR? 岩瀬仁紀-外から中へ曲がり込むスライダー(アテネ五輪:ギリシャ戦) http //www.youtube.com/watch?v=DMDOpOlS0aY? 岩瀬仁紀-アテネ五輪(豪州戦)三振を奪った最初の相手フル対決 http //www.youtube.com/watch?v=DPEduYsCz-Q? 岩瀬仁紀-岩瀬の球威/新庄のレインボーバット粉砕 http //www.youtube.com/watch?v=5e2hhcoNGMM? 岩瀬仁紀-新庄のレインボーバット粉砕の瞬間の超スロー映像(レア映像) http //www.youtube.com/watch?v=VwyQefriSV4? 1999日本シリーズ第1戦 ルーキー岩瀬仁紀初登板 http //www.youtube.com/watch?v=U0rKlRq2qgQ? 山本昌 Masa Yamamoto 2006/9/16山本昌ノーヒットノーラン 全イニング全打者 http //www.youtube.com/watch?v=q7fTudI6Oas? 川上憲伸 Kenshin Kawakami 1999日本シリーズ第2戦 全8奪三振 http //www.youtube.com/watch?v=Z-a1lADub4M? 強投豪打!川上憲伸 http //www.youtube.com/watch?v=YZRkJHZUZzw? 福留孝介 Kosuke Fukudome 福留孝介HR (対オクスプリング) http //www.youtube.com/watch?v=PA_iOGk9dD8? 福留孝介HR (対内海) http //www.youtube.com/watch?v=3oCkgFRJFe8? 福留孝介‐通算100号HR対上原 松本歯科大学の上(推定150M弾) http //www.youtube.com/watch?v=rYllEVLkKdM? プロ野求 中日vs日本ハーム 2nd (対八木) http //www.youtube.com/watch?v=HhT6adhev7I? 福留ランニングHR (対石井) http //www.youtube.com/watch?v=vupPYuGaL3k? WBC準決勝 福留の一撃 (対金炳賢) http //www.youtube.com/watch?v=4SE99DQLQFE? 福留 ライトゴロ http //www.youtube.com/watch?v=fPPZjtu-eIA? 井上一樹 Kazuki Inoue 06年8月30日 9回ツーアウトの土壇場で藤川から同点ホームラン http //www.youtube.com/watch?v=mkSiV8xcIbg? 中村紀洋 Norihiro Nakamura 07年3月11日 田中将大からオープン戦第二号ホームラン http //www.youtube.com/watch?v=YjRMl4-WO1A? 中村紀洋 ホームラン集 http //www.youtube.com/watch?v=ug0e6vhLYII? 中村紀洋 ファインプレー集 http //www.youtube.com/watch?v=KFtWvh-l_08? 郭源治 Genji Kaku 自ら打ったサヨナラホームラン http //www.youtube.com/watch?v=fsD7J9RFpVA?
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ドラゴンブレイブ
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パック:ゴッド・ブレス・ユー ディファレント・ロウ(P)に続きコレクション用カードが満載のパックその2。レアリティはやはり全てノーマル。 突然変異を使う場合は、融合の幅を増やすために有効ではある。 通常モンスターは同パックに収録してある融合モンスターの素材になるカードが多い。購入する場合は数BOXまとめて買っていこう。 内容の割に出現条件はデュエリスト1の全キャラクタークリアかチャレンジ100%と厳しい。デッキの中の小さな太陽(P)のオマケだと思っておこう。 モンスターカード アーメイル ノーマル 赤き剣のライムンドス ノーマル 暗黒の竜王 ノーマル 異次元からの侵略者 ノーマル 海原の女戦士 ノーマル 海を守る戦士 ノーマル エンゼル・イヤーズ ノーマル 王座の守護者 ノーマル ガーゴイル ノーマル 火炎草 ノーマル 格闘戦士アルティメーター ノーマル 冠を戴く蒼き翼 ノーマル キラーパンダ ノーマル キラー・ブロップ ノーマル グレムリン ノーマル 黒魔族のカーテン ノーマル クワガタ・アルファ ノーマル ケンタウロス ノーマル 恍惚の人魚 ノーマル 鋼鉄の巨神像 ノーマル コケ ノーマル シーカーメン ノーマル 屍を貪る竜 ノーマル 邪炎の翼 ノーマル シルバーフォング ノーマル 神魚 ノーマル スカイ・ハンター ノーマル スティング ノーマル スネーク・パーム ノーマル スリーピィ ノーマル セイント・バード ノーマル タイホーン ノーマル ダイヤモンド・ドラゴン ノーマル タクヒ ノーマル 舌魚 ノーマル 髑髏の寺院 ノーマル トラコドン ノーマル ドラゴン・ゾンビ ノーマル 砦を守る翼竜 ノーマル 二頭を持つキング・レックス ノーマル ハイ・プリーステス ノーマル ヒューマノイド・スライム ノーマル ひょうすべ ノーマル フェアリー・ドラゴン ノーマル フレイム・ヴァイパー ノーマル ベヒゴン ノーマル ヘラクレス・ビートル ノーマル 炎の魔神 ノーマル 魔界のイバラ ノーマル マグネッツ1号 ノーマル マグネッツ2号 ノーマル マグマン ノーマル 魔天老 ノーマル 水の魔導師 ノーマル ミノタウロス ノーマル 冥界の番人 ノーマル メガ・サンダーボール ノーマル メテオ・ドラゴン ノーマル メデューサの亡霊 ノーマル モンスター・エッグ ノーマル ランプの魔人 ノーマル 陸戦型 バグロス ノーマル レッサー・ドラゴン ノーマル ワームドレイク ノーマル 一眼の盾竜 ノーマル 儀式モンスターカード ガルマソード ノーマル クラブ・タートル ノーマル ジャベリンビートル ノーマル スーパー・ウォー・ライオン ノーマル スカルライダー ノーマル チャクラ ノーマル デビルズ・ミラー ノーマル ハングリーバーガー ノーマル 要塞クジラ ノーマル ローガーディアン ノーマル 融合モンスターカード アクア・ドラゴン ノーマル 暗黒火炎龍 ノーマル アンデッド・ウォーリアー ノーマル カイザー・ドラゴン ノーマル カオス・ウィザード ノーマル カルボナーラ戦士 ノーマル 金色の魔象 ノーマル 黒き人喰い鮫 ノーマル クワガー・ヘラクレス ノーマル 紅陽鳥 ノーマル 千年竜 ノーマル 裁きの鷹 ノーマル 深海に潜む鮫 ノーマル 水陸両用バグロス ノーマル スカルビショップ ノーマル スケルゴン ノーマル 朱雀 ノーマル ソウル・ハンター ノーマル デス・バード ノーマル デビル・ボックス ノーマル 轟きの大海蛇 ノーマル バラに棲む悪霊 ノーマル バロックス ノーマル ヒューマノイド・ドレイク ノーマル フュージョニスト ノーマル ブラキオレイドス ノーマル プラグティカル ノーマル フラワー・ウルフ ノーマル フレイム・ゴースト ノーマル 炎の騎士 キラー ノーマル 魔装騎士ドラゴネス ノーマル 魔導騎士ギルティア ノーマル マブラス ノーマル マリン・ビースト ノーマル ミノケンタウロス ノーマル 音楽家の帝王 ノーマル メカ・ザウルス ノーマル メタル・ドラゴン ノーマル 雷神の怒り ノーマル レア・フィッシュ ノーマル 魔法カード 悪魔鏡の儀式 ノーマル 亀の誓い ノーマル ガルマソードの誓い ノーマル ジャベリンビートルの契約 ノーマル スカルライダーの復活 ノーマル チャクラの復活 ノーマル ハンバーガーのレシピ ノーマル 要塞クジラの誓い ノーマル ライオンの儀式 ノーマル ローの祈り ノーマル
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流石夏のシャカP - 名無しさん (2022-08-11 16 28 55) バランス型なのと2色バフなのがなあ。バフ総量的には28%と多いけど - 名無しさん (2022-08-13 13 48 25)
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概要 一覧表 レーダーチャート 育成比較成長値の損得 メイジの育成検証 基本職のレベル10時点 各職レベル200の値 特化育成(脳筋・純魔)50/100/150/200の値 特化育成例 特殊育成例 ▼ 情報提供はこちら 概要 レベルアップ時の職業によってステータスの上昇値が違う。近接職なら物理攻撃力と防御力が、魔法職なら魔法攻撃力と魔法防御力が、弓職ならバランスよく上昇する。ステータスは、ゲーム開始時にどの職を選んだかで大きく決定される。 その後のレベルアップでは、LV2~10が最も伸びやすく、LV11~100が特徴的に伸び、LV101~200になるとほとんど伸びなくなってくる。 ウォリアー、レンジャー、ソーサラー等の上級職は攻撃力が大きく伸ばせるが、利便性の高いファイター、ストライダー、メイジ等の下級職は平均的に伸びがち。よって最初は上級職で育成しておき、ある程度育ちきったら下級職に転職させる育成法がお勧め。 魔法攻撃力が伸びる職業で育てた後、近接職を遊びたくなった場合、装備時に魔法攻撃力が上がる属性武器を装備する事で解決する。 物理攻撃力が伸びる職業で育てた後に魔法職につかせたい場合、物理攻撃力は無駄になりがちだが、高めのHPと防御力を持っていることが多いので生存性が増す。 とはいえ、このゲームは装備品の性能でステータス加算が大きい。あくまで計画的に育成する事により、もうちょっと強くできる程度の認識でよい。 序盤~決戦まではキャラクターのステータスで強さが決まりがちだが、終盤~黒呪島にかけては破格な性能の武具が手に入るので、今度はステータスがオマケ程度になって来る。 どのような育て方をしても、詰むような事はありません。Dark Arisenでも同様、黒呪島でもクリア可能を確認。 とはいえ、微量のダメージには影響するので、ステータスにこだわりを持って育てたい場合などにどうぞ。 一覧表 レベル 1 HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイター 450 540(M) 80 60 80 60 ストライダー 430 540(M) 70 70 70 70 メイジ 410 540(M) 60 80 60 80 ※初期選択ジョブによるHPの差は一度ジョブを決めてしまうと変更出来ない。なお"基本職であれば"レベル10以前にジョブ変更可能。方法は2種類、黒呪島で変更orハードモードに切り替え、覚者は村長の家で、ポーンは宿営地でジョブ変更可能。 ※STの値はキャラのサイズによる修正が加わります。(一度作成した後でもキャラのサイズを再エディットで変更した場合、STが変更後のサイズに応じた値に再修正されます) SS (50kg未満) -40 S (50~69kg) -20 M (70~89kg) +00 L (90~109kg) +20 LL (110kg以上) +40 ※Mサイズを基準とした場合 レベル 2~10(レベル10時点の合計値は後述) HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイター 30 20 4 2 3 2 ストライダー 25 25 3 3 3 2 メイジ 22 20 2 4 3 3 レベル 11~100(レベル10以降"上位職に"ジョブ変更可能) HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイター 37 15 4 2 4 1 ストライダー 25 25 3 3 3 2 メイジ 21 10 2 4 1 4 ウォリアー 40 10 5 2 3 1 レンジャー 21 30 4 3 2 2 ソーサラー 16 15 2 5 1 5 ミスティックナイト 30 20 2 3 3 3 アサシン 22 27 6 2 2 1 マジックアーチャー 21 20 2 3 3 4 レベル 101~200 (この色はダークアリズンの場合) HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイター 15 5 1 - 3 - ストライダー 5 15 1 1 1 1 メイジ 10 10 - 2 - 2 ウォリアー 5 15 2 - 2 - レンジャー 5 15 2 - 1 1 ソーサラー 10 10 - 3 - 1 アサシン 5 15 3 - 1 - ミスティックナイト 15 5 1 1 1 1 マジックアーチャー 10 10 -or1 1 - 3or2 ※攻略本にはレベル101~ウォリアーの上昇量がHP15ST5とありますが間違いでHP5ST15が正しいので修正しないでください 検証画像 ① ② レーダーチャート ⇧ 育成比較 成長値の損得 Lv101以降の成長値はHPST合計20,攻防合計4の割り振りで全ジョブ共通だが、LV100までの成長値はHPST合計50,攻防合計11を基準としてジョブにより差があり、 1.基準値通りのタイプ 2.HPST合計が多いタイプ 3.HPST合計が少ないタイプ 4.HPST合計が少ないが攻防合計が多いタイプ の4パターンがある。 その中でも特に魔法系ジョブはHPST合計値が大幅に下がりやすく、Lv100まで全てメイジorソーサラーでレベルアップした場合はHPSTの合計値が1700以上も下がってしまう。魔攻or魔防を少し補強したいだけならLv101以降で伸ばしたほうがお得。 レベル 2~10 (括弧内は基準値に対する+-値) HPST合計 攻防合計 成長タイプ Fig 50 11 基準値通り Str 50 11 基準値通り Mag 42(-8) 12(+1) HPSTが少ないが攻防が多い レベル 11~100 (括弧内は基準値に対する+-値) HPST合計 攻防合計 成長タイプ Fig 52(+2) 11 HPSTが多い Str 50 11 基準値通り Mag 31(-19) 11 HPSTが少ない War 50 11 基準値通り Ren 51(+1) 11 HPSTが多い Sor 31(-19) 13(+2) HPSTが少ないが攻防が多い MK 50 11 基準値通り Ass 49(-1) 11 HPSTが少ない MA 41(-9) 12(+1) HPSTが少ないが攻防が多い ※略称は下記の通り Fig:ファイター Str ストライダー Mag:メイジ War:ウォリアー Ren レンジャー Sor:ソーサラー MK:ミスティックナイト(覚者専用) Ass アサシン(覚者専用) MA マジックアーチャー(覚者専用) メイジの育成検証 Lv11~100のメイジとソーサラーの成長率はHPSTの割り振りが違うだけで攻防の合計が多いソーサラーのほうが得をしている(というかメイジの成長率が不遇)。 そこでソーサラーと他ジョブを組み合わせて育成することで、メイジ育成の完全上位互換の能力を作れてしまう。 以下の数パターンで、Lv11~100の90回分のレベルアップ上昇値を比較 HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 Sorで90Lv 1440 1350 180 450 90 450 Magで90Lv 1890 900 180 360 90 360 Figで22Lv、Sorで68Lv 1902 1350 224 384 156 362 Warで22Lv、Sorで68Lv 1968 1240 246 384 134 362 MKで33Lv、Sorで57Lv 1902 1515 180 384 156 384 …完全にメイジ育成が霞んでしまっている。Lv11~100のレベルアップでメイジを使うのはこだわりがない限りオススメしない。 基本職のレベル10時点 HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイターLv10 720 720 116 78 107 78 ストライダーLv10 655 765 97 97 97 88 メイジLv10 608 720 78 116 87 107 各職レベル200の値 HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 ファイター 5550 2570 576 258 767 168 ストライダー 3405 4515 467 467 467 368 メイジ 3498 2620 258 676 177 667 ウォリアー 4820 3120 766 258 577 168 レンジャー 3045 4965 657 367 377 368 ソーサラー 3048 3070 258 866 177 657 ミスティックナイト 4920 3020 396 448 477 448 アサシン 3135 4695 937 277 377 178 マジックアーチャー 3498 3520 358 486 357 667 基本上位六職平均値 3894 3476 497 482 423 399 全九職平均値 3879 3566 519 455 417 409 特化育成(脳筋・純魔)50/100/150/200の値 HP ST 物攻 魔攻 物防 魔防 Fig10→Ass50 1600 1800 356 158 187 118 Fig10→Ass100 2700 3150 656 258 287 168 Fig10→Ass150 2950 3900 806 258 337 168 Fig10→Ass200 3200 4650 956 258 387 168 Mag10→Sor50 1248 1320 158 316 127 307 Mag10→Sor100 2048 2070 258 566 177 557 Mag10→Sor150 2548 2570 258 716 177 607 Mag10→Sor200 3048 3070 258 866 177 657 ※ドラゴンズドグマ成長計画表 D.D. GROWTH PLANの計算結果を元に記載。 ※スタミナの数値はキャラのサイズによって異なるので、育成ミスではない。 特化育成例 物理攻撃特化(覚者) HP 3200 ST 4650 HPST合計 7850 物攻 "956" 魔攻 258 攻撃合計 1214 物防 387 魔防 168 防御合計 555 育成 Fig/1-10 → Ass/11-200 物理攻撃特化(ポーン) HP 4820 ST 3120 HPST合計 7940 物攻 "766" 魔攻 258 攻撃合計 1024 物防W 577 魔防 168 防御W合計 745 物防R 477 魔防 268 防御R合計 745 育成 Fig/1-10 → War/11-200 【※Ren/101-200 (Lv101以降War・Renは物防・魔防以外の伸びは全て同じ)】 魔法攻撃特化(覚者・ポーン共通) HP 3048 ST 3070 HPST合計 6118 物攻 258 魔攻 "866" 攻撃合計 1124 物防 177 魔防 657 防御合計 834 育成 Mag/1-10 → Sor/11-200 物攻・魔攻バランス(覚者) HP 3588 ST 4097 HPST合計 7685 物攻 "605" 魔攻 "605" 攻撃合計 1210 物防 265 魔防 309 防御合計 574 育成 Mag/1-10 → War/11 → Ass/12-97 → Sor/98-200 物攻・魔攻バランス、HPST10の倍数版(覚者) HP 3530 ST 4100 HPST合計 7630 物攻 "602" 魔攻 "602" 攻撃合計 1204 物防 262 魔防 323 防御合計 585 育成 Mag/1(NewGameでメイジ選択後、Hardモードに一旦変更) → Str/2-10 → Sor/11-20 → Ass/21-105 → Sor/106-200 物攻・魔攻バランス(ポーン) HP 5291 ST 2110 HPST合計 7921 物攻 "562" 魔攻 "562" 攻撃合計 1124 物防 375 魔防 272 防御合計 647 育成 Fig/1-9 → Str/10 → War/11-99 → Sor/100-200 物防・魔防バランス(覚者)←無印限定 物防 557 魔防 557 合計 1114 育成 Mag/1-15 → MA /16-130 → Fig/131-200 物防・魔防バランス(覚者・ポーン共通) HP 3737 ST 2630 HPST合計 6367 物攻 401 魔攻 518 攻撃合計 919 物防 "511" 魔防 "511" 防御合計 1022 育成 Fig/1-8 → Mag/9-10 → Sor/11-95 → Str/96 → Fig/97-200 特殊育成例 注意!! "覚者やポーンのサイズ(重量)毎に育成方法が違うので、間違えないように!" "転職できるだけのジョブポイントを保持すること!" ※自分好みのオリジナルな育成をする場合には、ツール。こちらのページに飛んだ先にあるステータス計算機を使うと便利である。 全バランス型(覚者・ポーン共通) HP 4000 ST 3500 HPST合計 7500 物攻 500 魔攻 500 攻撃合計 1000 物防 400 魔防 400 防御合計 800 育成SS (SSサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/9up Lv10-100 → Mag/5up Sor/11up Ren/16up Str/21up War/37up Lv100-200 → Ren/1up Fig/7up Sor/9up War/17up Mag/31up Str/35up 育成S (Sサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/9up Lv10-100 → Mag/6up Sor/11up Ren/15up Str/21up War/37up Lv100-200 → Fig/6up Sor/9up War/22up Str/30up Mag/33up 育成M (Mサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/9up Lv10-100 → Mag/7up Sor/11up Ren/14up Str/21up War/37up Lv100-200 → Ren/1up Fig/6up Sor/10up War/23up Str/28up Mag/32up 育成L (Lサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/9up Lv10-100 → Mag/8up Sor/11up Ren/13up Str/21up War/37up Lv100-200 → Fig/5up Sor/10up Str/23up War/28up Mag/34up 育成LL (LLサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/9up Lv10-100 → Mag/9up Sor/11up Ren/12up Str/21up War/37up Lv100-200 → Ren/1up Fig/5up Sor/11up Str/21up War/29up Mag/33up 高HP,攻バランス型(覚者・ポーン共通) HP 5000 ST 3000 HPST合計 8000 物攻 500 魔攻 500 攻撃合計 1000 物防 485 魔防 285 防御合計 770 育成SS (SSサイズ) 初期選択職業 → ファイター Lv1-10 → Fig/8up Mag/1up Lv10-100 → Mag/2up Str/3up War/12up Fig/73up Lv100-200 → War/1up Fig/9up Str/10up Mag/17up Sor/63up 育成S (Sサイズ) 初期選択職業 → ファイター Lv1-10 → Fig/8up Mag/1up Lv10-100 → Mag/2up Str/8up War/17up Fig/63up Lv100-200 → Str/7up Fig/14up Mag/16up Sor/63up 育成M (Mサイズ) 初期選択職業 → ファイター Lv1-10 → Fig/8up Mag/1up Lv10-100 → Str/2up Mag/4up War/12up Fig/72up Lv100-200 → Str/2up War/6up Fig/10up Mag/18up Sor/64up 育成L (Lサイズ) 初期選択職業 → ファイター Lv1-10 → Fig/8up Mag/1up Lv10-100 → Mag/4up Str/7up War/17up Fig/62up Lv100-200 → War/1up Str/2up Ren/2up Mag/14up Fig/16up Sor/65up 育成LL (LLサイズ) 初期選択職業 → ファイター Lv1-10 → Fig/8up Mag/1up Lv10-100 → Mag/6up War/13up Fig/71up Lv100-200 → War/4up Str/5up Fig/12up Mag/14up Sor/65up 全バランス型 ミナゴロ、ミナゴロ、シシシシシシシシシシシシ!ver.(覚者用) HP 3756 ST 3756 HPST合計 7512 物攻 444 魔攻 444 攻撃合計 888 物防 444 魔防 444 防御合計 888 育成SS (SSサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/7up Str/2up Lv10-100 → Ass/3up Str/10up Ren/15up Mag/16up MK/46up Lv100-200 → Mag/5up MK/6up Fig/21up Str/31up Ren/37up 育成S (Sサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/7up Str/2up Lv10-100 → Ass/3up Str/11up Ren/14up Mag/17up MK/45up Lv100-200 → Mag/4up MK/7up Fig/21up Str/31up Ren/37up 育成M (Mサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/7up Str/2up Lv10-100 → Ass/3up Str/11up Ren/13up Mag/18up MK/45up Lv100-200 → War/1up Mag/2up MK/9up Fig/20up Str/32up Ren/36up 育成L (Lサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/7up Str/2up Lv10-100 → Ass/3up Str/11up Ren/12up Mag/19up MK/45up Lv100-200 → War/2up MK/11up Fig/19up Str/33up Ren/35up 育成LL (LLサイズ) 初期選択職業 → メイジ Lv1-10 → Mag/7up Str/2up Lv10-100 → Ass/3up Str/11up Ren/11up Mag/20up MK/45up Lv100-200 → War/5up MK/12up Fig/18up Str/31up Ren/34up ▼ 情報提供はこちら 追記はできないけど、情報提供がしたいという方はこちらへ。 (追記の手順: ページ上部の“ページ編集” → 該当部分をコピペして書き換え → “ページ保存”でOK。簡単です) 不確定情報の議論以外の雑談・質問は Dragon's Dogma wiki BBS でお願いします。 物理特化レンジャーでの大門周回の快適さ、速さを体感してからどうぞ - 名無しさん (2024-01-21 14 49 29) 魔特でやってもお守り爆裂縮れでダイモン20秒余裕で切るからマジで大差ないんよ。 - 名無しさん (2024-01-21 23 41 55) セーブデータ1つしかないからバランス型でどっちでも行けるようにしてるわ - 名無しさん (2024-01-21 23 53 06) 10年以上経ってもステ論争割れてるのは取り返し付かない要素ってだけじゃなくテキトーでも無双できる難易度なのもあるんだろうな。ちなみに物特魔特605バランス3つ作って比べれば数字以上の火力差が出るのは分かるけどバランスじゃ火力物足りないってだけで別に困ることないし最適化されたステで周回すべきエンドコンテンツもない - 名無しさん (2024-01-23 20 28 08) やりまくってると特化ステの強ジョブより用途を決めてオリジナルで組んだステのウォリだのファイターだの魔撃砲に頼らないMKみたいな方がおもろかったりするしなぁ - 名無しさん (2024-01-23 21 06 31) まあオモロイと思う感性人それぞれだしな。俺はどっちかなんてもったいないから3垢作って全部やるよ。とりま2はよ出てくれ〜 - 名無しさん (2024-01-31 18 53 56) ドグマ2ではステータスの振り直しとか出来るようになってると有り難いよなぁ - 名無しさん (2024-02-19 16 49 33) またレベル依存成長なのに振り直しあるわけない - 名無しさん (2024-02-21 21 10 20) 2の仕様まだ判明してなくない? - 名無しさん (2024-02-22 22 00 17) 動画見ると良いよレベルアップで固定成長しジョブ毎に上がるステ違ってる。振り分け制でもない。 - 名無しさん (2024-03-06 20 21 49) 2は超レアアイテムで基礎ステ微量アップがいいなぁ。吟味とか振り直しとかいらんねん。 - 名無しさん (2024-03-02 10 51 42) 課金限定アイテム…とかなら、ありそう…オンラインは課金アイテムで迷走してたし。 - 名無しさん (2024-03-07 20 02 12) 2でもこのクソめんどくさいgm仕様確定してんの? - 名無しさん (2024-03-04 01 45 20) メディアインタビューにあったけど、セーブスロットまた1枠だけで確定。 - 名無しさん (2024-03-04 02 53 18) また別ビルド遊ぶためにアカウント用意させんのかよ。アホなのか - 名無しさん (2024-03-04 02 54 50) セーブ中にフリーズしてデータ消えたことあるし、2スロット欲しかったなぁ - 名無しさん (2024-03-15 22 15 29) 名前 ?